エアリスの園芸

花咲か名無しさん

スラムにもちょっとした夏祭りみたいなものがあったりする。

エアリスもかあちゃんと店を出していて、漬物だの梅干しだの
ちょっとした惣菜だのと季節の花を売っていた。
ぱっと眼を引いたのがほおずき。屋台の支柱にたくさん下げてあって
ああなつかしい、かわいいねとおばあさんが買って行った。

エアリスは紺地に赤と紫の朝顔柄の浴衣姿。
よう、エアリス、浴衣すごくいいじゃんって声をかけたら
ホント？子供っぽくない？って心配そうだったんで
全然！ばっちりだよって力を込めて保証した。

そしたら紺地に桔梗柄の浴衣のエアリスのかあちゃんが
店はしばらくあたしが見てるからちょっとぶらぶらしておいでって
エアリスに言った。おしゃれしたらお出かけしなきゃいけないよ、だって。

ほんと？じゃあちょっと行ってくるね、またねって
エアリスは赤い鼻緒の下駄をカラコロ鳴らして少女みたいに走って行った。

自分は仕事の途中だったから、そのまま配達に行ったけど
配達先の店から、通りで氷食ってるエアリスが見えた。
と、黒服で黒髪の男と目が合った。
見覚えのある顔だったから思わずあっ、と声を出したら
その男はささっと人ごみに消えていってしまった。

なんかね、あんな暑苦しい格好でずっとうろついてたから
うっとうしくってさ、って配達先の店長が言った。
あいつ、ずっと浴衣のエアリス見てたわけ?
澄ました顔してとんだ助平野郎だよねえ。