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興行収入を見守るスレ5723

1 :名無シネマさん:2022/10/25(火) 17:30:02.06 ID:B7WlvUyC0.net
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このスレは映画が日本で売れたか売れないか、だけ
作品、人等について語りたい方は関連スレで。実況は実況板で。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
煽り目的の表や同じコピペを繰り返すのはスレの容量を重くする荒らしです。スルー推奨
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
海外興行収入、円盤売上は原則禁止。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
>>900を踏んだ人が宣言した上で、>>950までに次スレを立てること、無理な場合は速やかに他の人に頼むこと
>>950を超えて次スレが立たないなら速やかに減速する
スレの流れが速い場合は、確実に立てられる人間が宣言をして900以前にスレ立てをしても可

関連リンク
・MovieWalker(月) http://movie.walkerplus.com/ranking/japan/
・興行通信社(月) http://www.kogyotsushin.com/archives/weekend/
・eiga.com(月) http://eiga.com/ranking/jp
・MOJO http://www.boxofficemojo.com/intl/japan/
・THR.com http://www.hollywoodreporter.com/topic/asia-movies-film-reviews
・THE NUMBERS http://www.the-numbers.com
・文化通信速報 http://www.bunkatsushin.com/news/list.aspx?nc=1
・社団法人日本映画製作者連盟 http://www.eiren.org/toukei/index.html
・週間動員ランキング http://www.kogyotsushin.com/archives/weekly/
・Korean Film Council https://www.kobis.or.kr/

※前スレ
興行収入を見守るスレ5722
https://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1666619728/
VIPQ2_EXTDAT: checked:vvvvvv:1000:512:: EXT was configured

874 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:11:47.96 ID:5TEczSfJ0.net
 僕はジョーの背中を睨み据え、歯を食いしばり、拳を握り締める。

 僕は黙って見ているのか? 僕じゃ何も出来ない。

 ジョーに逆らえず、ただ支配される。そんなの国じゃない。

 どうすることもできないのか?



 ジョーは一人の隊員を指さして首を傾げる。

「お前、似ているな。オレが嫌いだった親父に」

 ジョーが隊長の肩から離れて、指を差した隊員の元に向かい、ポンプアクションショットガンの銃口を隊員の顎に突きつける。

 そのまま隊員の顎をくいっと上げる。

 隊員の顔が引きつり、小さく悲鳴を上げて気まずそうに視線をジョーから逸らす。

875 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:11:58.24 ID:5TEczSfJ0.net
 ジョーは隊員の顔を覗き込んで、不気味に喉の奥で笑う。

「オレの親父は、生体兵器のために実の息子であるオレを実験台にしたのだ。その結果、オレは化け物になった。オレは親父を憎み、この手で親父を殺した。オレの中で殺意が芽生え、母親も兄も殺した。オレは化け物になったのだ。フハハハハッ。お前を見ていると思い出す。親父をな」

 隊員がジョーから顔を背けたので、ジョーは口許を押さえて、自分に顔を向けさせる。

 隊員の顔が引きつり、「こ、殺さないでくれ」と、生唾を飲み込み喉仏が動く。

 ジョーは隊長に顎をしゃくり、喉の奥で楽しそうに笑う。

「お前が殺せ。自分の部下を殺すか、それともお前が死ぬか」

 ジョーはポンプアクションショットガンを肩に担ぎ、肩を竦めて首を傾げて後退った。

 ポンプアクションショットガンを肩に担いだまま、腰に手を当てて、楽しそうに二人の高見の見物をしている。 

876 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:12:09.27 ID:5TEczSfJ0.net
 隊長はジョーが指さした部下にオートマチック銃の銃口を静かに構え、震える手で部下にオートマチック銃の銃口を向ける。

「……できない。自分の部下を殺すなんて、私にはできない。職を辞めた方がマシだ……」

 隊長は泣きながらオートマチック銃を下ろし、俯いて胸のバッチを取って地面に落とす。

 部下も静かに俯き、拳を握り締める。

「隊長……僕も職を汚すなら、ここでバッチを捨てます」

 部下は胸のバッチを取って地面に放り投げ、オートマチック銃も放り投げる。



 ジョーは瞼を閉じて片手で肩を竦め、残念そうに首を横に振る。

「ショーを見れなくて残念だよ。お前たちの敬意を込めて、オレがお前たちの正義を散らしてやる」

877 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:12:18.70 ID:5TEczSfJ0.net
 ジョーはポンプアクションショットガンを構えて、隊長と自分の父親似だと指さした隊員を撃つ。

 二人は抵抗することなく、ジョーに撃たれて仰向けに倒れた。



 そ、そんな。

 僕は目の前で起きたことを、黙って見ているしかなかった。

 僕が無力だから? 僕は瞼を閉じて首を横に振る。違う、そうじゃない。

 僕が立ち上がろうとしたら、横からルビナ姫の手が伸びてきて僕を制する。



 ジョーは喉の奥で不気味に笑いながら、ポンプアクションショットガンを下げて倒れた隊長の元に向かう。

 隊長の傍でポンプアクションショットガンを肩に担いで、片膝を地面に突いて膝の上に腕を載せて屈み込み、ジョーは隊長の顔を覗き込む。

 隊長の開いた瞼をジョーは片手で閉じ、ジョーは瞼を閉じて胸の前で静かに十字を切る。

878 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:12:28.08 ID:5TEczSfJ0.net
「戦士よ、安らかに眠りたまえ」

 ジョーが立ち上がり、何故かポンプアクションショットガンを投げ捨てる。

「降参だ。好きにするがいい」

 ジョーは隊員を見回しながら、その場でゆっくりと両膝を地面に突き、両手を高く上げた。



 どういうことだ?

 意図的に降参したのか?

 ルビナ姫に手で制されたまま、僕の眼が動揺でさざ波の様に揺れている。

 その時、ルビナ姫がおもむろに起き上がり、よろけながらジョーの元に向かう。



 僕はルビナ姫を眼で追う。

879 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:12:43.80 ID:PZdq8oGUd.net
>>853
奈良は前は効果ないからセーフつってたぞw

880 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:12:49.52 ID:GG8YyDald.net
>>829
SNSだとルフィとウタの関係性についても高く評価されてるからそれは無い
アニメおたくだからアニメしか指標が無いんだろうけど評価の低いアニメは見ないから関係ない

もういいよ、自分の見たいものだけ見て好都合な条件下でのみ勝利宣言してるだけだし
お前と違って暇じゃ無いので寝るね
どう足掻いてもクオリティでも興収でもRED>天気は確定
これは特典は関係ない、見てみりゃわかる

Yahoo映画評価
RED 3.9
天気 3.6

881 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:12:50.52 ID:5TEczSfJ0.net
「お、おい」

 僕はルビナ姫の背中に手を伸ばす。

 キミが行ったところで、どうなるっていうんだ。

 僕はどうなっても知らないぞ。

 僕はルビナ姫の背中に手を伸ばしたまま、ルビナ姫を静かに見守る。



 ルビナ姫が鬱陶しそうに髪を掻き上げる。

「あなたたち、何してるの? 突っ立ってないで、さっさとジョーを拘束しなさい。それでも国を守る人間なの? ジョーを逃がすつもりかしら? 答えは目の前に出ているでしょ?」

 ルビナ姫が隊員の間を割って入り、ジョーの前まで歩み寄る。

 ルビナ姫はスカートを捲って太ももに巻き付けて装着したホルスターからオートマチック銃を抜いて、ジョーにオートマチック銃を構える。

882 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:13:04.21 ID:5TEczSfJ0.net
 隊員の一人がルビナ姫に驚いて振り向き、死人でも見るようにまじまじとルビナ姫の顔を見る。

「ひ、姫様……気絶してたんじゃ……」

 隊員たちが顔を見合わせている。



 ルビナ姫はオートマチック銃をジョーに構えたまま、ジョーを睨み据える。

「目の前で人が死んだのよ!? 私は暢気に寝てられない。もう甘えてる私じゃないの。ジョー、動かないで。あなたの身柄を拘束し、ゾット刑務所に連行します。そこで罪を償いなさい。時間が罪深さを教えてくれるわ。少しでも動いたら撃つわよ?」

 ルビナ姫がよろけて、傍の隊員が慌ててルビナ姫の肩を両手で支える。

883 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:13:14.74 ID:5TEczSfJ0.net
 ジョーはルビナ姫に振り向いて、ルビナ姫を睨んで不気味に喉の奥で笑う。

「まだ立てるか、姫よ。オレを逮捕するのか? 面白い。お前になにができる?」

 ジョーが喉の奥で笑い、挑発するようにルビナ姫を指さし、人差指を突き出して人差指を小さく左右に振る。

 ジョーは人差指をルビナ姫に向けて、人差指の指先から赤いレーザーを放つ。

 赤いレーザーはルビナ姫の肩を貫く。



「うっ」

 ルビナ姫は顔をしかめてオートマチック銃を地面に落とし、怪我を負った肩を押さえる、



 ほらみろ。足手まといになっただけじゃないか。

 僕は拳を握り締める。

884 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:13:25.14 ID:5TEczSfJ0.net
 王女のくせに、自分で何も出来ないのに無茶して。

 僕は歯を食いしばる。もう我慢できない、黙って見ているのは嫌だ。ルビナ姫を助けないと。

 僕は噴水から立ち上がって、よろけながらルビナ姫の元へと向かう。



 ジョーは両膝を地面に突いたまま緑のシャツの袖を捲って、デジタル腕時計を見て空を仰ぐ。

「時間だ。オレはこれからズール砂漠に新型ミサイルのテストに向かう。ミサイル一つで街が吹っ飛ぶ。会場には悪どもが集まっているのでな。さて、幾らでミサイルが売れるかな?」

 ジョーは挑発する様に人差指を突き出し小さく左右に振り、両手首をクロスさせて爆発のジェスチャーをして、不気味に喉の奥で笑う。

 ジョーが立ち上がろうとすると、ルビナ姫が地面に落としたオートマチック銃を素早く拾い上げて、片手でジョーを撃った。

 ジョーはそのままの態勢で首を傾げ、不気味に喉の奥で笑う。不気味な呼吸音が響く。

885 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:13:26.79 ID:weyVZWwWa.net
とりま、特典いらんから
あばら骨、アムステルダム、
シャイニーシュリンプス2、
天間荘の三姉妹、貞子DX
オネアミス。これは観る

886 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:13:34.98 ID:5TEczSfJ0.net
 街が吹っ飛ぶ新型ミサイル?

 そんなことさせない。

 僕は拳を握り締める。



 ルビナ姫が自分を支えてくれている隊員の脇腹を乱暴に肘で小突く。

「なにしてるの!? さっさとジョーを拘束しなさい!」

 ルビナが顔をしかめて両膝を地面に突き、怪我をした肩を手で押さえたままジョーに顎をしゃくり大声で叫ぶ。



 隊員たちが驚いて顔を見合わす。

「は、はっ!」

 隊員がジョーの元に駆け寄り、制服のポケットから銀色の輪っかを取り出し、ジョーの両手首に銀色の輪っかをかける。

 すると、銀色の輪っかはぴっと機械的な音が鳴ってジョーの両手首に締まる。

 ジョーが隊員に連行されてゆく。

 ジョーが連行されてパトロール隊のバンに乗り込もうとしたとき、ジョーが空を仰ぎ人差指で空を指さす。

887 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:13:49.75 ID:5TEczSfJ0.net
 その時、噴水の傍の石畳に影が現れ、少しずつ影が大きくなる。

 隊員たちが不思議そうに空を見上げる。

 ルビナ姫が額に手を当てて空を見上げ、僕も空を見上げる。

 空から四つのパラシュートをつけたジープの装甲車が風に揺られながらゆっくりと落ちてくる。

 ジープの屋根にはミサイルが二発積まれて固定されてある。

 ジープの装甲車が地面に近づく時、運転席の窓から銀色の筒が落ちてきた。

 地面に落下した銀色の筒は転がりながら、筒の穴から白いガスが噴出された。

888 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:14:02.81 ID:5TEczSfJ0.net
その時、噴水の傍の石畳に影が現れ、少しずつ影が大きくなる。



「なんだあれは?」

 隊員たちが不思議そうに空を見上げる。

 隊員たちの顔が影で翳る。



 ルビナ姫が額に手を当てて空を見上げ、僕もルビナ姫を見習って空を見上げる。

 空から四つの黒いパラシュートを付けたジープの装甲車が風に揺られながらゆっくりと落ちてくる。

 ジープの屋根にはミサイルが二発積まれ、しっかりとベルトで固定されてある。

 ジープの装甲車が地面に近づく時、運転席の窓から銀色の筒が落ちてきた。

889 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:14:19.41 ID:5TEczSfJ0.net
 地面に落下した銀色の筒は転がりながら、筒の穴から白いガスが噴出された。



 数秒後に隊員の悲鳴が聞こえる。

「ぐあああああ!」

 次々に隊員が地面に倒れる重い音が聞こえる。



 僕はパニックに陥り、なんとなくルビナ姫を見る。

 ルビナ姫が慌てて口元を手で覆いながら、スカートのポケットから二枚のハンカチを取り出す。

 ハンカチで口元を覆い咳き込みながら、ハンカチを手に持ってスカートの裾を持ち、慌てて僕の元へ駆け寄る。



 僕はルビナ姫を見習い、慌てて袖で口許を押さえる。

 白いガスに目を凝らす。また毒ガスなのか? それとも、ジョーの新しい兵器か?

890 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:14:29.36 ID:5TEczSfJ0.net
 こんなの惨すぎる。罪のない人を殺すなんて。

 許せない。僕は片手で拳を握り締める。

 ルビナ姫が僕の傍に来ると、僕はルビナ姫からハンカチを受け取り、口元をハンカチで覆った。

 ルビナ姫は僕と手を繋ぎ、パトロール隊のバンに顎をしゃくって駆け出す。

 ルビナ姫の足元がおぼつかずこけそうになり、慌てて僕がルビナ姫を抱いて支える。

 ルビナ姫が僕から離れて頷き、僕たちはパトロール隊のバンに向かって再び駆け出す。

 ガスが生き物のように辺りに満ちてゆく。

 ガスが僕たちを死の世界に誘うために白い手を伸ばす。

891 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:16:14.61 ID:5TEczSfJ0.net
 ガスから逃げるため、僕たちがパトロール隊のバンに向かう途中。

 近くでジョーの不気味な呼吸音が聞こえる。

「シェリア、遅かったな。五分遅れだ。輸送機の離陸が遅れたか?」

 不気味に喉の奥で笑う声が聞こえる。



 僕の横を一人の少女が通り過ぎる。僕は驚いて少女に振り向く。

 ルビナ姫は少女を無視している。そんな状況じゃないんだろうな。

 少女は紅く長い髪と目許を覆う黒いバイザーを装着し、戦闘スーツを身に包んでいた。オレンジ色の瞳が黒いバイザー越しに鋭く光る。



 僕は思わず立ち止まって少女の背中を見送る。

 やがて少女の影がガスの中に吸い込まれるように消えた。

 ルビナ姫が僕の手を引っ張って僕は我に返る。

 僕はルビナ姫に振り向くと、ルビナ姫はハンカチを口許で押さえたまま首を横に振る。

892 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:16:27.65 ID:5TEczSfJ0.net
 ルビナ姫の意思が伝わり、僕は頷く。

 僕たちは手を繋いだまま、パトロール隊のバンに向かって駆け出した。

 僕は走りながら首を傾げる。

 あの子、どこかで見た様な……紅い髪、オレンジ色の瞳。どれも特徴的だ。

 そうだ。麻利亜の空間移動の時に、映像に映ってた女の子だ。

 あの子、麻里亜と似てたから印象に残ってる。

 名前はシェリアだったかな。でも、あの子はジョーに撃たれて死んだはずじゃ……

 僕は否定するように瞼を閉じて首を横に振る。まさかね。

 ガスの中でオートマチック銃の銃声が聞こえる。僕は動揺して振り向く。

 数秒後にドアが閉まる音が聞こえて、エンジン音が遠ざかる。



 くそっ。何が起こってるんだ。僕は動悸で息が荒くなる。

 ガスが晴れないと見えない。麻里亜を助けないと。

893 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:16:34.86 ID:weyVZWwWa.net
おまえら、あばら骨の
レポート期待しとけよ

894 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:16:36.28 ID:5TEczSfJ0.net
 でも、今はガスを吸うと危険だ。ガスが晴れるまでバンの中で待たないと。

 ルビナ姫がパトロール隊のバンのスライドドアを開けて、僕を片足で蹴って乱暴に中に押し込む。

 ルビナ姫が乱暴にスライドドアを閉め、僕はドアを閉める音に驚いて両耳を両手で塞ぎ、片目を瞑る。

 ルビナ姫が運転席のドアを開け、運転席に座り、運転席のドアを勢いよく閉める。



 僕はハンカチを乱暴にシートに投げつけ、シートから身を乗り出す。

「何する気だよ! ガスが晴れるまで待つんだ、麻里亜を助けないと」

 車内の上にはショットガンやマシンガン、さらには弾や手りゅう弾が金属ベルトで固定されている。

895 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:18:30.36 ID:5gd+tm+Y0.net
3年半前、まだコロナウイルスのコの字も
世の中に広まっていない頃…

要介護の年寄りを抱えながら
仕事に悪戦苦闘するワイに助手として会社が送り込んできたのが
齢29の既婚女性だった
何でも結婚〜出産を経て、子どもが保育園に通うようになったので
職場復帰を兼ねての着任とかで、なかなかの才女とのウワサが
伝わってきたものの、当時のワイには余計なお節介以外の何ものでもなく
「1、2ヶ月様子を見たら、理由をでっち上げて突き返そう」くらいの
つもりだった
ところが、一緒に仕事をしてみると意外にもこれが大当たり
仕事は迅速にこなすし、機転は利くし、数週間ののちには
こっちが舌を巻くほどになっていた

たちまち意気投合したワイと彼女は
外回りに出て時間が余ったときなどはいそいそとホテルへ…
などとことは決してなかった反面
「行っちゃおうか」「行っちゃいましょう」なんて言い合っては
二人でこっそりユナイテッド浦和へしけ込む仲になった

896 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:19:50.50 ID:weyVZWwWa.net
俺の勘ではあばら骨より
天間荘のほうが地雷くさい
予告が薄すぎ150分あるのに?
あれかよ。あばら骨は
一発の魅力秘める

897 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:20:42.57 ID:weyVZWwWa.net


898 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:23:38.88 ID:upJ2pfTur.net
あーばらあーばらあーばら ばらばら
ぼーぶ
ぼーぶ

899 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:24:32.75 ID:upJ2pfTur.net
せっぼね せっぼね せっぼね
びっしりししゅー

900 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:24:37.12 ID:39x0W3Cua.net
あぼーん途切れたぞ
手動で荒らすの疲れましたってか?
だらしねえな

901 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:25:00.37 ID:5gd+tm+Y0.net
やがて、二人で映画を鑑賞した後は
近場のカフェに入って感想を語り合うのが定番に
「ミュンスターバーグが」「バラージュが」
「蓮実重彦が」「ドゥルーズが」と熱弁するワイの話を
彼女はニコニコしながら聞いていたものだが
今から思えば、そんなささやかな脱線も
仕事に家庭に子育てに奔走する彼女にとっては
ちょっとした息抜きになっていたのだろう

やがては彼女の鑑賞眼もめきめき上達し
映画館を出てタリーズの席に着くなり、開口一番
「今日のはダメでしたね」なんて言うまでになっていた

902 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:25:07.41 ID:5TEczSfJ0.net
 ルビナ姫は僕を無視して、ハンドルの傍のエンジンスタートボタンを押す。

 ぴっと機械的な音が鳴ってエンジンが掛り、警告音が車内に響く。

 運転席のモニターが赤く点滅している。

「警告。車内に異常な神経ガスの侵入を察知しました。これより空調システムを起動します」

 感情のない女性の機械音声が車内に響く。

 運転席のクーラーやエアコンの通風口から、掃除機の様な音とともに車内に漂うガスが吸い取られてゆく。

903 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:25:40.82 ID:39x0W3Cua.net
もう寝るので>>910さんスレ立てお願いしますー
ごめんねー🙏

904 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:25:41.63 ID:5TEczSfJ0.net
 ルビナ姫が運転席から振り向く。

「ガスが晴れるまで待ちましょう。ガスが晴れたら飛ばすわよ!」



 僕は窓の向こうの濃いガスの中、目を凝らして運転席の背もたれを拳で叩く。

「ふざけるな! 麻里亜を置いていけない! 麻里亜を助けないと……」

 僕はスライドドアを開けて、今すぐにでも麻里亜を助けに行こうとする。



 ルビナ姫がドアをロックしたのか、ぴっと機械的な音が鳴る。

 スライドドアを開けようとしても開かない。ドアにロック解除も見当たらない。

「警告。外は神経ガスが満ちているため、外に出るのは危険です。死亡率100%」

 感情のない女性の機械音声が車内に響く。



 僕はシートから身を乗り出して、歯を食いしばってルビナ姫の襟首を掴む。

「ここから出せ! なにしてるんだ!」

 狂ったようにルビナ姫の横顔を睨み据える。

905 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:25:55.58 ID:5TEczSfJ0.net
 ルビナ姫が僕の手を払いのけ、僕に振り向いて僕の肩を掴んで必死に揺らす。

「あなた、どうしちゃったのよ!? まだ彼女に執着してるの!? 彼女はもう戻らないのよ!? 今やるべきことがあるでしょ!? 彼女なら隊員が弔いしてくれるわよ……他の隊員は恐らくガスにやられたでしょうね……」

 ルビナ姫が僕の肩から手を離し、俯いて首を横に振る。



 僕は怒りが込み上げ、またルビナ姫の襟首を掴む。

「そんなことはどうだっていいんだ! 父上の研究所で麻里亜を修理してもらえば、なんとかなるかもしれないだろ!」

 僕は歯を食いしばってルビナ姫を睨み、片手の拳を握り締める。

906 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:26:04.18 ID:5TEczSfJ0.net
 ルビナ姫がまた僕の手を払いのけて、僕の頬を平手で思いっきりぶつ。

 肌と肌が触れる鈍い音が響く。

「甘えてるんじゃないわよ!? 逝ってしまった人は戻らないの。たとえ彼女がアンドロイドでも。目を覚ましなさい! これで、あたなに説教された借りは返したわよ? おあいこよ」

 ルビナ姫はそっぽを向いて腕を組み、窓の外を寂しそうに見つめている。

 運転席の窓にルビナ姫の悲しい顔が映る。



 僕の眼が動揺でさざ波の様に揺れて、ルビナ姫にぶたれた頬を指先で擦る。

 やがてやるせなくなり、シートにゆっくりと腰を下ろして俯く。

「な、なにするんだよ……あ、ありがとう、ルビナ姫。おかげで目が覚めたよ、僕が間違ってた。もう麻里亜は戻らない。僕たちができることを、今やろう……」

 僕は滲んだ涙を手の甲で拭い、洟をすすった。

907 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:26:12.98 ID:5TEczSfJ0.net
 その時、窓を叩く音がして、僕は顔を上げて窓に振り向いた。

「た、助けてくれ……」

 手や顔の皮膚が溶けて焼けただれ、変わり果てた隊員の姿。

 やがて隊員が苦しそうに眼を剥いて喉元を掻き毟って、その場に血を吐きながら倒れた。



 これは現実だ。ジョーが描いたシナリオなんだ。

 僕は気分が悪くなって吐きそうになり、慌てて口許を押さえて窓から顔を背ける。

 ルビナ姫が気分を紛らわすために小さい音量で音楽を掛けてくれる。

「これがジョーのやり方よ。ジョーを倒さない限り、深い闇は晴れない。こうしている間にも、西のアルガスタに危機が迫ってるわ。なんとしても、私たちでジョーを止めるわよ」

908 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:26:21.31 ID:5TEczSfJ0.net
 ルビナ姫が振り向いて、僕に拳を突き出す。



 僕はルビナ姫の拳に自分の拳を重ねる。小さな涙を拭って。

「ジョーはズール砂漠に向かったはずだ。ガスが晴れてからジョーを追いかけよう」

 ルビナ姫から拳を離し、車内に二人きりという状況に僕は急に恥ずかしくなって顔が火照る。

 慌てて両手を振りルビナ姫から顔を背ける。

 気を紛らわすために人差指で頬を掻き、ルビナ姫を横目で瞬きしながら見る。



 ルビナ姫が額に手を当てて瞼を閉じて首を横に振る。

「私、ちゃんと運転できるかしら。一応、訓練で運転はしたことあるけど。操作を覚えてないのよねぇ」

 ルビナ姫が腕を組んで顎に人差指を当てて天井を仰ぎ、心配そうに首を傾げながら唸る。

909 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:26:30.86 ID:5TEczSfJ0.net
 僕はわざとらしく咳払いする。

「あ、あのさ。僕はあなたじゃないから。ジンって名前があるんだ。今度から名前で呼んでよ……」

 僕は後頭部を掻きながら、恥ずかしそうにルビナ姫を上目遣いで見る。



 ルビナ姫の顔が狐に頬を摘まれたような顔をしてきょとんと瞬きしている。

「えっ? あっ、ああ、そうね。でも、ジンこそ王女である私を気安くルビナ姫って呼んでるじゃない? ま、まあ、しょうがないわね。特別に私のことをルビナ姫って呼んでいいわよ」

 ルビナ姫は顔が火照って、慌てて運転席に向き直る。

 運転席に向き直る際にハンドルに肘をぶつけたらしく、ルビナ姫は痺れた肘を手で擦っている。

910 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:26:40.61 ID:5TEczSfJ0.net
 しばらく気まずい二人の沈黙が続く中、ガスが少しずつ晴れてきた。

 僕はゆっくりと後部座席から身を乗り出して、ルビナ姫に振り向く。

「あのさ、本当に運転できるんだろうね? なんか心配なんだけど?」

 ルビナ姫の胸を見て、僕は唾を飲み込んで喉を鳴らす。

 ルビナ姫が僕に振り向いて手刀打ちで僕の頭を軽く叩く。

「そんなに心配? じゃ下りる? ジンは大人しく後部座席で座ってればいいのよ。助手席に座ったら邪魔になるだけ。いい? 私が運転するわ」

 ルビナ姫が呆れたように額に手を当てて瞼を閉じ、首を横に振ってため息を零す。

911 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:26:52.11 ID:5TEczSfJ0.net
 僕はルビナ姫から目を逸らし、不安でため息が零れた。

 ルビナ姫の胸を見て、僕の鼓動が高まって胸を手で押さえる。

「わかったよ。僕は後部座席で大人しく座ってる」

 僕は口を尖らせて訝しげにルビナ姫を見ながら、後部座席に腰を下ろして後頭部で手を組む。

 ルビナ姫が窓を一瞥して、瞼を閉じて肩を竦めてため息を零した。

「ガスが晴れてきたわね。これでも非常時に運転できる免許を持ってるのよ? まあ、免許は私の部屋にあるけど。これでも色んな訓練を受けたんだから」

 ルビナ姫は瞼を閉じたまま額に手を当て、首を横に振っている。

 僕はルビナ姫の肩に手を置いた。

「早くしないとジョーに追いつかなくなる。運転頼んだよ」

 ルビナ姫は僕に振り向いて僕の肩に手を置き、僕に優しく微笑む。

「ええ。ジンの力が必要だわ。ご協力感謝します」

912 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:27:01.50 ID:5TEczSfJ0.net
 その時、運転席のモニターから映像と音が流れた。

「緊急速報。街中をジープの装甲車が暴走中。現在、ヘリで追跡中です。ナビゲーションしますか?」

 感情のない女性の機械音声が車内に響く。

 遠くでヘリコプターの飛ぶ音が聞こえる。



 ルビナ姫は慌てて運転席のモニターに振り向いた。

「了解。ナビゲーション開始」

 ルビナ姫が両手でハンドルを握り、気合充分に手を動かしている。

 僕は後部座席に腰を下ろし、シートベルトを締めて天井の手摺を掴み、生唾を飲み込んで喉を鳴らした。

913 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:27:11.16 ID:5TEczSfJ0.net
 運転席のモニターの映像と音が消えて真っ暗になる。

「登録外のため、あなたは運転できません。スロットにIDカードを通してください」

 感情のない女性の機械音声が響き、警告音が車内に鳴り響く。



 ルビナ姫が両手でハンドルを叩く。

「どうなってんのよ! IDカードなんて持ってないわよ!」

 ルビナ姫はやるせなくなり、ハンドルに頬をくっつけてぶつぶつと文句を言っている。



 どうするんだよ。

 このままじゃ、ジョーに追いつかなくなる。

 僕は腕を組んで唸った。

914 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:27:24.00 ID:5TEczSfJ0.net
 運転席のモニターの映像と音が消えて真っ暗になる。

「登録外のため、あなたは運転できません。スロットにIDカードを通してください」

 感情のない女性の機械音声が響き、警告音が車内に鳴り響く。



 ルビナ姫が両手でハンドルを叩く。

「どうなってんのよ! IDカードなんて持ってないわよ!」

 ルビナ姫はやるせなくなり、ハンドルに頬をくっつけてぶつぶつと文句を言っている。

915 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:27:26.00 ID:upJ2pfTur.net
すたみな ズタズタにさせる
くるぶし スタンガンなみの ひだりあし
はだかいっかん がりがり
ひとよんで
アバラボブ

916 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:27:33.20 ID:5TEczSfJ0.net
 どうするんだよ。

 このままじゃ、ジョーに追いつかなくなる。

 僕は腕を組んで俯き、口を結んで唸った。



 ルビナ姫が気合を入れて頬を両手で二度叩いた。

「しっかりしなさい、ルビナ姫。私は王女でしょ。諦めないわよ。ジン、IDカードを探してちょうだい。車内にあるはずよ」

 ルビナ姫が運転席から身を乗り出して、助手席のダッシュボードを開けて書類を手探りしている。

 書類をダッシュボードに入れ過ぎたのか、ダッシュボードから書類が雪崩の様に落ちる。

 ルビナ姫が「ああもう」と文句を垂らし、頭を掻きながら座席の下に落ちた書類を拾い上げてゆく。

917 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:27:48.05 ID:5TEczSfJ0.net
 僕は書類を拾い上げるルビナ姫を見て頷き、シートベルトをゆっくりと外した。

「僕もIDカード探すの手伝うよ」

 僕は後ろに振り向き、後部座席の上に雑に置いてあった黒いジャケットを手に取る。

 胸にパトロール隊のロゴがある。ジャケットの両ポケットを手探りしてみるけど、IDカードはない。

 あるのは丸めたレシートだけだった。

 黒いジャケットを丁寧に畳んで、後部座席の上に置く。



 ルビナ姫が乱暴にダッシュボードを閉める音が聞こえ、僕はルビナ姫に振り向く。

「もぉ、IDカードないじゃない! どこにあるのよ!」

 ルビナ姫が頭を掻きながらの文句が聞こえる。

918 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:27:58.48 ID:5TEczSfJ0.net
 僕は運転席で茶封筒の中身の書類を取り出したり、茶封筒の中を見たり、IDカードを必死に探しているルビナ姫を見る。

 僕はルビナ姫を見て微笑む。ふと運転席にかけてある黒いジャケットに目がいき、僕は腕を組んで首を傾げた。

 意外とポケットにIDカードがありそうだな。運転席にジャケットがかけてあるし。

 僕は身を乗り出して、運転席にかけてある黒いジャケットの胸ポケットを手で探ってみる。

 何か写真の様な手触りがして、僕はジャケットからそれを抜き取った。

 それは、隊員の家の庭でバーベキューをした時の家族写真だった。

 息子と娘が笑顔で紙の小皿に盛られた肉を美味しそうにフォークでほおばっている。

919 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:28:08.96 ID:5TEczSfJ0.net
 二人とも頬に小さなバーベキューソースが付き、息子はカメラから顔を背けている。

 娘は愛犬シェパードと頬擦りしてピースを決めている。

 夫が妻の背中に手を回して、二人ともカメラ目線で笑顔だ。

 写真を撮ったのは誰だろ? 家族の誰かだろうか?

 写真の裏には撮影日が手書きで書かれ、『これが僕たちの家族だ』と、メッセが添えられている。

 男性の顔を見つめる。彼はジョーの父親に似ているという理由で、ジョーに殺された。

 隊員の家族写真を見ているうちに、ジョーの非情なやり方に心がいたたまれなくなった。

 僕は拳を握り締め、瞼を閉じて首を横に振る。がくっと肩を落とし、瞼を閉じたまま俯く。

 この家族写真を見て、彼は仕事していたのだろうか。 

 僕はそっと胸ポケットに写真を戻そうとしたら、ルビナ姫の手が写真に伸びた。

920 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:28:18.84 ID:5TEczSfJ0.net
 ルビナ姫の指先が震えている。

「その写真……」

 ルビナ姫が写真を手に取り、隊員の家族写真を見つめる。

 数秒後にルビナ姫は洟をすすり、口許を手で押さえて嗚咽する。

 ルビナ姫が無言で瞼を閉じて首を横に振り、口許を手で押さえたまま嗚咽して、写真から顔を逸らして僕に写真を返す。

 僕は写真をジャケットの胸ポケットにそっと入れる。

 泣いているルビナ姫を放っておき、僕は運転席にかけてあるジャケットの右ポケットを手探りする。

 IDカードはなく小銭と飴玉が幾らか入っていて、僕は俯いてポケットに小銭と飴玉を戻す。

 今度はジャケットの左ポケットを探る。頭の中でさっきの家族写真の映像が流れる。

921 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:28:29.51 ID:5TEczSfJ0.net
 何かカード状の手触りがして僕は顔を上げてそれをゆっくりと抜き取る。

 それはIDカードではなく、隊員の免許書だった。エドワードアーヴィング巡査35歳。

 彼がジャケットのポケットに免許書を入れて、そのまま忘れたのだろうか。

 これが彼の最期の任務になるとは知らずに……僕は瞼を閉じて首を横に振る。



 僕は免許書に写った彼の笑顔を見て俯き、泣いているルビナ姫に免許書を差し出す。

「ねぇ……IDカードはなかったけど、隊員の免許書がジャケットのポケットに入ってた……」

 僕はゆっくりと顔を上げて、ルビナ姫を静かに見つめる。

922 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:28:37.53 ID:5TEczSfJ0.net
 ルビナ姫が涙を指で拭い、僕から免許書を受け取って免許書に目を落とす。

 数秒後に口許を押さえて嗚咽した。

「……彼は、ジョーの父親に似ているだけで、ジョーに殺された……なんてジョーは非情なのかしら……残酷で、冷酷な男。それがジョーよ……残された家族のためにも、私は彼の家族に会うわ……そうね。運転できるかどうかわからないけど、スロットに彼の免許書を通してみましょう」

 ルビナ姫が滲んだ涙を指で拭い、僕から免許書を受け取り頷く。

 ルビナ姫は運転席のモニターのカードスロットに免許書を通してみる。



 僕たちの祈りが通じたのか、機械的な音が鳴った。

「登録者確認、エドワードアーヴィング巡査。彼は現在IDカード更新手続き中のため、免許書での運転を許可します」

 感情のない女性の機械音声が車内に響く。

923 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:28:46.35 ID:5TEczSfJ0.net
 僕たちは顔を見合わせて片手で叩き合う。

 僕は胸を撫で下ろす。なんだか複雑な気持ちだ。



「本人確認のため、声紋と指紋を確認します。ハンドルに手を掛け喋ってください」

 感情のない女性の機械音声が響き、ルビナ姫をテストするみたいだ。



 ルビナ姫が運転席のモニターに振り向く。

 僕は運転席に肘をかけて頬杖を突く。

 ここまでシステムが厳しいのに、西のアルガスタは無法地帯だからな。

 こんなシステム、ジョーが居る限り無意味だ。

924 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:28:55.05 ID:5TEczSfJ0.net
 ルビナ姫がハンドルを両手で乱暴に叩く。

「なんでよ! 私は王都ガランの王女、ルビナ姫よ! 犯罪者じゃないんだから! 非常時なのに! 頑固な機械ね! 少しはお利口になりなさいよ!」

 先ほどの哀愁が吹っ飛んで、怒りで運転席のモニターを睨んで舌を出している。



「……声紋と指紋を確認した結果、エドワードアーヴィング本人ではありませんでした。ですが、先ほどの声紋と指紋を検索した結果、王都ガラン王女ルビナ姫と一致したため、特別に運転を許可します。データを本部に送信します」

 感情のない女性の機械音声が響き、静かにエンジンが掛かる。

925 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:29:05.04 ID:5TEczSfJ0.net
「や、やったっ! やったわよ! ジン!」

 ルビナ姫が顔を輝かせて僕に振り向く。

 僕たちは互いに手を取り合って、踊って喜び合い、両手を高く叩き合わせる。

 お互いに抱き付き、お互い身体から離れると顔が近くにあったので互いに顔が火照り慌てて二人は顔を背ける。

 僕は気まずくなり人差指で頬を掻いている。



「視界、良好。天気、良好。交通状況、一台の暴走車在り。警告、ルビナ姫の運転歴が短いです。安全ドライブのため、ワタシがアシストします。ブレーキペダルを踏んだままハンドブレーキを下げ、シフトをドライブにシフトチェンジしてください」

926 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:29:14.45 ID:5TEczSfJ0.net
 僕はハンドブレーキとシフトを指さしてルビナ姫に教えた。

 これくらい本で読んだことあるから知ってる。



 ルビナ姫が袖を捲って首を傾げながら、ハンドブレーキを下げたり、シフトをチェンジしたりしている。

 すると、急なアクセル音とともに、バンが後ろに急発進し始めた。



 ルビナ姫がパニックになりクラクションを鳴らす。

「な、なんでぇぇぇぇぇ!」

 ルビナ姫が絶叫して慌ててハンドルを切る。

 車が左へ右へと後進暴走が続く。

 バンは停めてあったエアバイクに接触したり、レスキュー車に接触したりしていた。

927 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:29:25.57 ID:5TEczSfJ0.net
「警告。現在、車が暴走中……ルビナ姫の運転適性率20%。事故率100%。そのため、緊急停止します」

 感情のない女性の機械音声が響き、警告音が車内に鳴り、急ブレーキが掛かって噴水に激突する。

 僕は座席から飛び出して、後ろに引っ張られて背中をシートに打ち付ける。

 後ろを振り向くと、麻里亜が倒れていた所に何故か麻里亜の姿が消えていた。

 顔を戻して、僕は瞼を閉じて首を横に振る。

 そうだよ。もう麻里亜は逝ったんだ。僕は前を見て歩くんだ。



 ルビナ姫が両手の拳でぽかぽかと頭を叩いている。

「私の運転がそんなに信じられないの! もう、どうなってんのよ!」

 ルビナ姫が両手で頭を掻きむしっている。

928 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:29:38.30 ID:5TEczSfJ0.net
「後部に破損確認。ルビナ姫のドライブは危険です。これよりオートドライブに切り替えます。ルビナ姫は後部座席に移動してください。命令は受けつけます」

 勝手にシフトがドライブにチェンジされて、アクセル音とともにバンがゆっくりと動き出す。

 僕は後ろを振り向く。

 ルビナ姫が遺体を踏まなくて良かった。僕は胸の前で十字を切ってため息を零す。



 バンが突き破った門を踏んだのか、がくんと小さく跳ねる。

 フロントガラスから眺める海沿いの街並みが宝石の様に綺麗だ。

 向こうに青い海が広がっている。

 ジョーの屋敷は丘の上に建っていた。

 バンが左にハンドルを切って、エンジンブレーキを効かせながらゆっくりと丘を下る。

929 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:29:49.49 ID:5TEczSfJ0.net
 バンが突き破った玄関門を踏んだのか、がくんとバンが小さく跳ね、正門まで続くレンガ道を下る。

 レンガ道の周りは広大な敷地が広がっており、草地でスプリンクラーが回っている。

 フロントガラスから眺める海沿いの街並みが宝石の様に綺麗だ。天気もいい。

 背の高いビルやオレンジ色の屋根、高架や鉄橋、港に停まった船やヨットハーバーが見える。

 高架上では小さい車が縫い目の様に走り、鉄橋上で貨物列車が走っている。

 街の向こうには青い海が広がり、陽光でキラキラと海が光り、大きな貨物船や小さな船やヨットが見える。

930 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:30:00.57 ID:5TEczSfJ0.net
 港町キリカ。前に父上と麻里亜と僕の三人で旅行で訪れたっけ。

 どうりで見覚えがある景色なわけだ。

 キリカは景色はいいし、魚介類が新鮮で美味しい。遊ぶ所もある。

 けど、お金持ちしか住めないんだろうな。キリカを旅行して思った。

 ジョーの屋敷は丘の上に建っていた。

 ジョーの屋敷に振り向くと、まだ屋敷の残骸が燃えて白煙が上っていた。

 バンが自動で両開きした正門を抜けて左ハンドルを切り、エンジンブレーキを効かせながらゆっくりと丘を下る。

931 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:30:11.02 ID:5TEczSfJ0.net
 僕はシートベルトのベルトに手を伸ばし、ベルトを両手で引っ張って伸ばす。

「後ろに来ないの?」

 シートベルトを締め、シートベルトから顔を上げてルビナ姫に訊く。



 ルビナ姫が運転席から顔を出して、口を結んで首を横に振る。

「ジンの隣に座るなんて御免だわ。はしたない、不潔よ」

 ルビナ姫が肩を竦め、両手で身体を擦って身震いした。



 僕はため息を零して、窓の外を見る。

「そう。運転下手って言われたくせに、なんだよ」

 僕はふてくされて愛想笑いして、窓の縁に頬杖を突く。海沿いの街の景色をぼんやりと眺める。

 横目でルビナ姫を見て、鼻と喉を鳴らして不敵に笑う。

932 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:30:21.25 ID:5TEczSfJ0.net
 ルビナ姫が運転席から身を乗り出して拳を振り上げる。

「なによ! ちょっと運転にブランクがあっただけじゃないの!」

 悔しそうに助手席のシートを両手の拳で叩いている。

 僕を悔しそうに指さし、「ジン、覚えてなさい!」と捨て台詞を吐く。

 鼻と喉を鳴らし、運転席に腕を組んで凭れて右手の人差指が落ち着きなく上下に動いている。



 ジョーの屋敷に続く丘を下り、一般道と合流して信号待ちで、横断歩道前でバンが止まる。

 横断歩道をサングラスを掛けた女性がベビーカーを引いて歩いている。

 黒縁メガネを掛けてスーツを着て鞄を下げて歩くビジネスマン。携帯電話を耳に当てて手さげバックを腕に掛けた若い女性。

 子供と手を繋いで歩く母親。丸帽子を被り杖を突いて歩くおじいさん。

 目の前に駅のロータリーが見え、タクシーが何台も客待ちして、車が停まり、バスや車がロータリーを回っている。

933 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:30:32.49 ID:5TEczSfJ0.net
 液の周りにコンビニや銀行、スーパーがあって、様々なお客さんが出入りしている。



 その時、運転席のモニターからノイズ混じりの無線が入る。

「こちらA班! 現在ジョーを追跡中! 至急応援を頼む! ジョーの追手に追われてる!」

 モニターが車内映像に切り替わり、運転席に乗った黒い帽子を被り黒い制服を着た男性が映る。

 車内に一気に緊張が走る。

 僕はシートから身を乗り出し、運転席のシートに手を突き、運転席のモニターを凝視する。

 ルビナ姫も運転席から身を乗り出し、モニターに手を突き、モニターを凝視している。

 モニター越しにハンドルを握り、運転席の窓から後ろを振り向く男性。

 男性が前を向いて叫び、クラクションを何度も鳴らしている。

934 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:30:43.11 ID:5TEczSfJ0.net
 映像がかくかくして乱れる。

 あれ、音声を拾わなくなったのかな? 声が聞こえない。

 僕はモニターを凝視したままシートに凭れ、屋根の手摺を掴む。

 緊張して生唾を飲み込み喉を鳴らす。



 ルビナ姫が運転席のモニターの縁を手で叩く。

「変ね、壊れたのかしら。ルビナ姫よ! ジョーはどこ走ってるの! 状況を教えてちょうだい!」

 ルビナ姫が運転席のモニターを叩いて怒鳴る。



 運転席のモニターから、さっきより酷いノイズ混じりの無線が入る。

「ル、ルビナ姫ですか!? ジョーの屋敷の地下牢に閉じ込められてたんじゃ……」

 カメラ目線で明らかに戸惑い瞬きする男性の姿が運転席のモニターに映る。

935 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:30:57.44 ID:5TEczSfJ0.net
 ルビナ姫が運転席のモニターに手を突いたまま、顔を上げてフロントガラスを見たりしている。

「話は後よ! 私もジョーを追いかけてるの! あなたはジョーの屋敷に行ってちょうだい! 殉職した隊員がいるわ……」

 ルビナ姫が拳を握り締めた腕を下げ、俯いてモニターに突いた手の甲に額をつける。



 ノイズが直ったのか、さっきよりもクリアに無線が聞こえる。

 ルビナ姫が顔を上げてモニターを見る。

「了解です。自分はジョーの屋敷に回ります。ルビナ姫、気を付けてください」

 隊員がモニター越しに敬礼して、サイレンを鳴らしてハンドルを右に切ろうとした時だった。

936 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:31:07.42 ID:5TEczSfJ0.net
 助手席の窓に、黒いバイクに跨り、黒いヘルメットを被って黒いライダースーツを着た男がマシンガンを撃ってきた。

 隊員のこめかみに銃弾が貫通し、運転席にべっとりと隊員の血がつく。

 黒いバイクは加速してモニターから消える。

 隊員の額がハンドルに伏せ、車がバランスを失ってふらふら運転になり、数秒後に車が爆発してそこでモニターが消えた。



 信号が青になったのかバンが左に曲がって走り出す。

 ルビナ姫が口許を両手で覆って絶句している。

「なんてこと……」

 ルビナ姫は滲んだ涙を手で拭い嗚咽する。

937 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:31:19.36 ID:5TEczSfJ0.net
 僕はシートから身を乗り出して、ルビナ姫の肩に手を置く。

「……僕たちで仇を討とう。全て終わらせるんだ」

 僕はルビナ姫に微笑んで、フロントガラスを見た。



 ルビナ姫は洟をすすり、涙を手で拭う。

「ええ……もっとスピードは出ないの? これじゃジョーに追いつけないじゃないの……」

 ルビナ姫が顔を上げて、洟をすすり涙を指で拭う。



 バンのスピードが上がる。

 僕はスピードメーターを覗き込みと、ぐんぐんと速度が上がっている。

「安全運転では目標に追いつけないと判断しました。今から危険な運転を行いますので真似しないでください。間もなく脇道に逸れます」

 感情のない女性の機械音声が車内に響く。

938 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:31:29.23 ID:5TEczSfJ0.net
 バンが急に右ハンドルを切って、雑草が生えた茶色い土をタイヤが踏んで下ってゆく。

 がたがたとバンが大きく揺れ、ルビナ姫が慌ててシートベルトを締めて運転席の手摺に掴まる。

 土の道を下り、下の道路と合流した。



 下の道路は高級住宅街だった。

 道の両端に豪邸が建ち並び、軽装でウォーキングやジョギングをしている人たちがいる。

 サングラスを掛けた女性が荷物を掲げて道を横断しようとしていたので、バンのクラクションが鳴る。

939 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:31:37.47 ID:5TEczSfJ0.net
 道の脇にはスポーツカーや高級車が何台も停めてある。

 キリカは裕福な街だ。ジョーによって苦しんでいる人たちには目もくれないだろう。

 僕は窓の外の高級住宅街を見て思った。

 その時、曲がり角から黒いジープの装甲車が飛び出し、屋根からガトリング砲が現れてガトリングを撃ってくる。



 バンの車内に警告音が響き、モニターに上から見たバンの映像が映り、バン全体が赤く点滅している。

「車体の損傷を確認。ダメージ回避のため、路地裏に逸れます」

 感情のない女性の機械音声が車内に響き、急ハンドルで左に切り車体が大きく右に揺れる。

940 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:31:50.60 ID:5TEczSfJ0.net
 僕は屋根の手摺に掴まるが、遠心力で窓に押し付けられ頬が窓に張り付いた。

 ルビナ姫は遠心力で窓に思いっきり頭をぶつける音が聞こえた。

 バンは車一台が通れるくらいの狭い路地裏を猛スピードで走ってゆく。

 小さなバーの裏口にゴミ箱が置いてある。空を仰ぐと洗濯物が干してあり、洗濯物が風で靡いていた。



 僕はシートに手を突いて後ろを振り返る。

「撒いた感じ?」

 僕は運転席のルビナ姫に振り返る。

941 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:31:57.59 ID:5gd+tm+Y0.net
いつまでも続くかのように思われたそんな関係に
変化が訪れたのが二年前の年末
職場に彼女が年度内限りで移動になるらしいという
ウワサが流れ始め、年明けには具体的な話となって
ワイに伝えられた

彼女なしには仕事が成り立たない状態になっていたワイは
焦りに焦り、二度にわたって会社に上申書を提出するなど
あらん限りの抵抗を試みた
二度目の上申の際には、懇意にしている役員に呼び出され
「お前ら、何かあったのか?」と聞き取りを受けるほどだった
その場では「何もない」と言い切ったものの
ワイは自分が彼女に惚れていることに気づいてしまっていた

942 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:31:59.64 ID:5TEczSfJ0.net
 ルビナ姫は運転席から僕に振り向いて肩を竦める。

「さあ。待ち伏せしてるかも? 諦めるとは思えないけど?」

 ルビナ姫は額に手を当てて後ろに目を凝らす。



 その時、数メートル先に曲がり角から出てきた、乳母車を引いたお婆さんが歩いていたので僕は慌ててルビナ姫の肩を叩いて前を指さす。

「あ、危ない!?」

 僕はシートから身を乗り出して運転席に手を突き、鼓動が高まり乳母車を引いたお婆さんから目を離せずにいる。



 ルビナ姫が慌てて前に振り向く。

「お願いだから事故は避けてよね!」

 ルビナ姫が悲鳴を上げて瞼を閉じ、顔の前を腕で遮る。

943 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:32:24.06 ID:5TEczSfJ0.net
 僕も顔の前を手で遮り、ぎゅっと瞼を閉じる。

 バンのクラクションが鳴り、お婆さんの乳母車を撥ねた音が聞こえた。

 僕はそっと瞼を開け、何事も無かったことに安心してシートに凭れ瞼を閉じて胸を撫で下ろす。

 額の汗を手の甲で拭い息を吐いて振り向く。

 お婆さんは驚いて背筋が真っ直ぐ伸びて曲がり角の傍の壁に張り付いていた。

 乳母車が横に倒れ、乳母車の中身が散らかり、野菜や果物が地面に転がっていた。

 お婆さんが腰を曲げて、地面に転がった野菜や果物を拾っている。

 顔を戻すと、ルビナ姫が後ろに振り向いていた。



 ルビナ姫が後ろに振り向いたまま、手を合わせて舌を出す。

「お婆さん、ごめんね。私たち急いでるの。それにしても、危機一髪だったわね」

 ルビナ姫が額の汗を手の甲で拭い息を吐く。

944 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:32:38.87 ID:5TEczSfJ0.net
 僕はもう一度お婆さんに振り向く。

「今のは僕もひやっとしたよ」

 顔を戻して、僕とルビナ姫は顔を見合わせ、可笑しくて笑い合った。



 僕とルビナ姫はシートに凭れた。僕は後頭部で手を組む。

 それにしても、長い路地裏だな。

 その時、前から二台の黒いバイクが猛スピードで、僕たちのバンに近づいてくる。

 黒いバイクに跨った奴は黒いヘルメットを被り、黒いライダースーツを着て黒の革手袋を嵌めて黒いブーツを履いている。

945 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:32:51.44 ID:5TEczSfJ0.net
 後ろからもバイクのエンジン音が近づき、僕は後ろを振り向く。

 後ろからも二台の黒いバイクが猛スピードで、僕たちのバンに近づいてくる。

 後ろの黒いバイクに跨った奴も、やっぱり黒いヘルメットを被り、黒いライダースーツを着て黒の革手袋を嵌めて黒いブーツを履いている。

 一台のバイクが前輪を浮かせてウイリー走行でパフォーマンスをして僕たちを威嚇した。

 こいつら、隊員を殺した奴らだ。

 このままじゃ挟み撃ちだ、どうすればいい。

946 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:33:05.88 ID:5TEczSfJ0.net
 僕とルビナ姫はシートに凭れた。僕は後頭部で手を組む。

 それにしても、長い路地裏だな。

 その時、前から二台の黒いバイクが猛スピードで僕たちのバンに近づいてくる。

 黒いバイクに跨った奴は黒いヘルメットを被り、黒いライダースーツを着て黒い革手袋を嵌めて黒いブーツを履いている。

 後ろからもバイクのエンジン音が近づき、僕は後ろを振り向く。

 後ろからも二台の黒いバイクが猛スピードで僕たちのバンに近づいてくる。

 後ろの黒いバイクに跨った奴も、やっぱり黒いヘルメットを被り、黒いライダースーツを着て黒い革手袋を嵌めて黒いブーツを履いている。

 一台のバイクが前輪を浮かせてウイリー走行でパフォーマンスをして僕たちを威嚇した。

 こいつら、隊員を殺した奴らだ。

 このままじゃ挟み撃ちだ、どうすればいい。

947 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:33:14.43 ID:5TEczSfJ0.net
 僕は前と後ろを振り向く。

 屋根を仰ぐと、金属ベルトで固定されたサブマシンガンが目に入る。

 僕は緊張で生唾を飲み込んで喉を鳴らし、動悸が激しくなる。銃でなんとかしないと。

 僕は金属ベルトに固定されたサブマシンガンを取ろうと金属ベルトのロック解除するスイッチを探す。

 金属ベルトを両手で触るがロック解除するスイッチが見当たらない。

 無理やりサブマシンガンを取ろうとサブマシンガンを両手で引っ張る。

「警告。悪用防止のため、現在銃器類はロックしています」

 感情のない女性の機械音声が車内に響き、僕は金属ベルトを拳で叩く。

948 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:33:25.14 ID:5TEczSfJ0.net
 僕は運転席のモニターを睨む。

「そんな場合じゃないだろ!」

 運転席から身を乗り出して僕に振り向くルビナ姫は首を傾げて肩を竦めた。

「大人しくしてれば? スパイ映画みたいに車に搭載武器があるのかもよ? 少しは信じなさいよ」

 ルビナ姫は運転席に振り向いて暢気に運転席のモニターを弄って音楽を掛けた。



 車内にノリノリの音楽が流れ、ルビナ姫が踊っている。

 なんでそんな冷静でいられるんだよ。僕は運転席で踊っているルビナ姫を睨む。

 僕はそっぽを向いて、大人しくシートに凭れ腕を組んだ。

 落ち着かなくて、左足と腕を組んだ右手の人差指が小さく上下に動いている。

949 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:33:34.79 ID:5TEczSfJ0.net
 窓の外を見るのをやめて横目で運転席のモニターを覗いた。

 運転席のモニターの映像が切り替わり、フロントの屋根から映した鮮明な映像に切り替わる。

 バンに接近する黒いバイクに跨ったライダーが映る。一台のバイクがウイリー走行した。

 もう一台のバイクが太腿に挿したマシンガンを片手で構えて撃ってくる。

 後ろを振り向くと、二人のライダーが片手でマシンガンを構えて撃ってくる。

「車体損傷率30パーセント。前後に障害物接近中。これよりウェポンによる障害物除去を行います」

 感情のない女性の機械音声が車内に響き、バンのフロントとバンパーの下から機械的な音が鳴る。

 僕は思わず下を見る。次の瞬間、ひゅっと何かが放たれる音がした。

950 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:33:44.71 ID:5TEczSfJ0.net
 顔を上げると、前方の二台の黒いバイクが同時に爆発してバイクの後輪が跳ね上がり空中回転している。

 黒いバイクが後ろに飛んでゆき、僕たちのバンが空中回転するバイクの下を通る。

 ライダーがバンの屋根に落ちて振り落された。

 後ろを振り向くともう一人のライダーはバイクから落とされまいと、グリップに必死に掴まりぶら下がっているのが間抜けだった。

 後ろの二台のバイクは地面に倒れて滑り、二人のライダーが地面を回転しながら転がっている。

951 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:33:52.48 ID:5TEczSfJ0.net
 僕は深く息を吐いて胸を撫で下ろす。

 ルビナ姫が運転席から身を乗り出して、満足そうに口を結んで首を横に振って肩を竦める。

「言ったでしょ? 一生体験できないわよ。カメラ持って来ればよかったかしら」

 ルビナ姫は残念そうに瞼を閉じて額に手を当てて首を横に振り、大人しく運転席に戻る。

 僕は屋根の手摺を掴みながら、鼻と喉を鳴らして笑った。

「特番に映像を売ろうとかそんなんだろ? そのお金でお洒落するんだろ?」

 僕は不敵に笑って肩を竦めた。

 ルビナ姫が顔を僕に向けて、瞼を閉じで舌を出す。図星だったみたいだ。

952 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:34:01.97 ID:5TEczSfJ0.net
 その時、後ろからエンジン音が聞こえ、僕は思わず後ろを振り向く。

 レンガの壁を突き破って黒いジープの装甲車が飛び出してきた。

 レンガの壁に大穴が開き、レンガの瓦礫が積もっている。

 黒いジープの装甲車は左に右に車体を擦りながら火花を散らし、猛スピードバンを追いかける。

 黒いジープの装甲車がバンに思いっきり衝突して、バンが大きく前に揺れる。



 僕はシートから飛び出してお腹がシートベルトに締め付けられ、お腹が苦して顔をしかめる。

「ちょっと! もっとスピード出ないの!?」

953 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:34:13.39 ID:5TEczSfJ0.net
 ルビナ姫が黒いジープの装甲車に振り向きながら、助手席のシートを叩いて怒鳴る。

 もう一度黒いジープの装甲車が思いっきりバンに衝突して、またバンが大きく前に揺れる。

 僕とルビナ姫が固唾を飲んで、運転席のモニターを見守る。



「車体損傷率50パーセント。周囲の安全確認完了。ナイトラスオキサイドシステムを使用し一気に加速します。シートベルトを着用してください」

 感情のない女性の機械音声が車内に響き、僕とルビナ姫は顔を見合わせて慌ててシートに凭れた。

 数秒後にバンが機械的な音を鳴らし、マフラーから火を噴出した様な音が聞こえた。 

 バンは一気に加速して、僕はシートに引っ張られた。景色が高速で駆け抜けてゆく。

954 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:34:22.22 ID:5TEczSfJ0.net
 前にキリカの遊園地で乗ったジェットコースターよりも迫力があった。

 とにかく身体に掛かる重力が凄まじい。

 パトロール隊のバンって、ジョー好みに改造されたのかも。

 ナイトラスオキサイドシステムなんて必要あるのか?

 路地裏に落ちている新聞紙や空き缶や段ボール箱を蹴散らしながら、路地裏を一気に抜けた。



 ジェットコースターが戻って来て急に停まるように、がくっと前に引っ張られた。

 お腹がシートベルトに締め付けられて気分が悪くなり、思わず吐きそうになり口許を両手で押さえる。

「ナイトラスオキサイドシステムの燃料切れのため、通常スピードに戻ります」

 感情のない女性の機械音声が車内に響き、一気にスピードが落ちる。

 路地裏を抜けた先は大通りだった。

 お腹を擦りながら後ろを振り向くと、黒いジープの装甲車が曲がり角を左に曲がった。

955 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:34:31.02 ID:5TEczSfJ0.net
 また突っ込んでくるかもしれないな。そう思いながら、僕は顔を戻した。

 目に映るのは何台もの車がひっくり返って燃えていたり、車が正面衝突していたり、店に車が突っ込んだり、車が前の車に衝突していたり、大通りは大参事だった。

 吸い寄せられるように窓の外を見た。ルビナ姫が音楽を切る。

 この大通りをジョーの車が通ったに違いない。

 担架でレスキュー車に運ばれてゆく頭に包帯を巻いた男性の怪我人。

 すがる様に担架に寄り添い、泣き叫ぶ女性。彼の母親だろうか。

 人が何人も血だらけであちこちに倒れ、火だるまの男が叫びながら走っている。

 衝突で車内に閉じ込められ、窓を叩く子供が泣き叫ぶ悲鳴が聞こえる。

 ひっくり返った車が爆発し、車の窓ガラスが飛び散った。

 サイレンが鳴り響き、何台ものパトロール車やレスキュー車がバンの横を通り過ぎる。

956 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:34:45.74 ID:5TEczSfJ0.net
 ルビナ姫の泣き声が聞こえる。

「見るの止めなさい。見世物じゃないのよ……」

 洟をすすり嗚咽するルビナ姫。



 僕は悔しくて歯を食いしばり拳を握り締める。

「ご、ごめん……」

 僕は胸の前で十字を切り俯いて手を組んだ。



 警告音のような機械的な音が鳴る。

「この先、通行止めになっています。別ルート検索中……」

 場を和ます様に感情のない女性の機械音声が車内に響く。



 僕は顔を上げると数メートル先にバリケードが設置され、消防車やレスキュー車で道路が通せんぼにされていた。バリケードの前で、オレン色の制服を着たレスキュー隊員が向こうを指さして怒鳴り、黒い制服を着たパトロール隊員が両手を腰に当てて何やら話し込んでいる。

957 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:34:56.63 ID:5TEczSfJ0.net
 消防車やレスキュー車の向こうで大きなビルの火災が見える。

 十字道路の真ん中でバンが静かに停まった。

 警告音のような機械的な音が鳴る。

「別ルート検索時間を要します。しばらくお待ちください」

 感情のない女性の機械音声が車内に響く。



 その時、レスキュー隊員と話し込んでいたパトロール隊員がバンに振り向き、パトロール隊員が黒い帽子を被り直して黒い制服を着た小太りの中年男がズボンを持ち上げてバンに近づいてきた。

 小太りの中年男が咳払いしてバンの運転席の窓を拳で叩き、運転席のウィンドウが下がる。

958 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:35:08.93 ID:5TEczSfJ0.net
「巡回か? ここは通行止めだ。迂回してくれ。あんた、顔が真っ赤だぞ。大丈夫か? どっかで見たことあるな……」

 小太りの中年男が運転席を覗き込んで肘を突いて手をひらひらさせ、首を傾げ目を細めた。



 ルビナ姫が洟をすすって運転席の窓から顔を出す。

「私はルビナ姫よ。何があったの?」

 ルビナ姫は涙を手で拭って運転席の窓の縁に手を突き、額に手を当てる。

959 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:35:17.02 ID:5TEczSfJ0.net
 小太りの中年男は帽子を脱いで敬礼した。

「こ、これは、ルビナ姫でしたか! 失礼しました! 私にも何が起こったのかわかりません。ただ、突然ビルが爆発したという通報がありまして……中に人が閉じ込められてて、救助活動が困難な状態なんです」

 帽子を被って肩を竦め、心配そうに燃えているビルを見つめる。



 ルビナ姫って顔が広いな。

 僕はシートから身を乗り出して助手席に手を突き、横目でルビナ姫の後頭部を見て思う。

 ルビナ姫が顎に手を当てて口を結び、腕を組んで呻り考え込んでいる。

 もしかして、これはジョーの陽動作戦かもしれない。僕はシートに凭れ腕を組んで考え込んでいた。

960 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:35:25.47 ID:5TEczSfJ0.net
「ねぇ。これって、ジョーの陽動作戦じゃないかしら。ここに人を集めて、ズール砂漠に行くには絶好のチャンスだわ」

 ルビナ姫が顔を上げて、閃いたように掌で拳を叩いて小太りの中年男を見る。



 僕はシートから身を乗り出して、運転席に手を突く。

「僕もそう思う。今、ジョーの追手は手薄といってもいい。キリカを出るにはもってこいだ」

 僕とルビナ姫が顔を見合わせて頷く。

961 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:35:31.86 ID:5TEczSfJ0.net
 小太りの中年男の腰に下げた無線に無線が入るが雑音で聞こえない。

 小太りの中年男は無線を無視して、顎に手を当てて腕を組んで口をへの字に曲げて呻る。

「そうかもしれませんね。何台かジョーの追手に回してみます。ジョーを止めないと。私は現場で手一杯なんです。それじゃ、これで失礼します。朗報待ってますよ、ルビナ姫」

 小太りの中年男は腰に下げた無線を取って踵を返し、無線で連絡しながら振り向いて帽子を取って被る。

 僕たちは顔を見合わせ、互いに肩を竦めた。

962 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:35:38.85 ID:C9NatY+3M.net
日米超決戦あばらVSアバター

963 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:35:41.06 ID:5TEczSfJ0.net
 その時、左の曲がり角からさっきの黒いジープの装甲車が猛スピードで飛び出し、僕たちのバンに衝突してバンが勢いよく横に回転してひっくり返った。



 僕は窓ガラスに頭を強く打ち、頭を押さえて顔をしかめる。頭が痛い。

 焦げたような臭いと煙臭い。ガソリンが漏れてるんだ。早く出ないと。

 運転席のモニターの液晶画面に罅が入り、ばちばちと火花が散っている。

964 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:35:54.73 ID:5TEczSfJ0.net
 その時、左の曲がり角からさっきの黒いジープの装甲車がエンジン音を響かせて猛スピードで飛び出し、僕たちのバンに衝突した。

 バンはアクション映画のように勢いよく横に激しく回転してひっくり返った。



 僕は窓ガラスに頭を強打し、頭を押さえて顔をしかめる。頭が痛い。

 焦げたような臭いと煙臭い。ガソリンが漏れてるんだ。鼻を手で押さえる。早く出ないと。

 運転席のモニターの液晶画面に罅が入り、ばちばちと火花が散っている。

965 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:36:01.78 ID:5TEczSfJ0.net
 僕はシートベルトを外して、どさっと車の天井に落ちる。

「ルビナ姫、大丈夫?」

 僕は身体を起こして屈み込み、額を手で押さえて顔をしかめ、運転席のシートに手を突いてルビナ姫に呼びかける。

 ルビナ姫を覗き込むと、ルビナ姫はぐったりと気絶していた。

 僕は口許を手で覆いながら片手でルビナ姫の身体を必死に擦るが、ルビナ姫は目を覚まさない。

966 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:36:10.54 ID:5TEczSfJ0.net
 運転席のモニターから火花が散っている。

 モニターから散った火花が僕の手に触れる。僕は熱くて思わず手を引っ込める。

 数秒後に運転席のモニターに火花が散って火が点き、小さく燃え始める。

 僕は一瞬、身体が固まる。こういうシーンを本で読んだことがあるけど、まさか実体験するとは。

967 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:36:20.49 ID:5TEczSfJ0.net
 その時、駆けてくる靴音が近づいてくる。

「ルビナ姫! 大丈夫ですか!? 大変だ、応援を呼ばないと……」

 さっきの小太り中年男の声が聞こえる。

 罅割れたフロントガラスの向こうに黒いジープの装甲車が停まった。

 黒いジープの装甲車の運転席ドアが開閉し、一人の男が下りてきた。

 男は頭が禿げて黒いサングラスを掛け、黒いコートを羽織り、黒いスーツを着て黒い革手袋を嵌めて黒いブーツを履いている。がっちり引き締まった身体で額に不気味な十字架の入れ墨が彫ってあり、右の頬に斜めの刀傷がある。

「き、貴様はレオン! ゾット教の異能者め!」

 罅割れたフロントガラス越しに小太り中年男が腰のホルスターから素早くオートマチック銃を抜いて、黒ずくめの男を撃つ。

968 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:36:28.88 ID:5TEczSfJ0.net
 急に小太り中年男の動きが急激に遅くなる。まるでスローモーションのように。

 銃弾までもはっきり肉眼で見える。小太り中年男以外は時が正常に流れている。

 そういえば、運転席のモニターが燃えていたのに、何故か炎が止まっている。全然熱くない。

 ルビナ姫も人形の様に完全に動きが止まっている。

 ルビナ姫の腕を触ってみると、石のように硬かった。

 僕だけが動けるみたいだ。確認するように掌を返して見たり、足を動かしてみる。

 あの男の力なのか? 僕はフロントガラス越しに黒ずくめの男を見る。

 急に胸が締め付けられるように動悸が激しくなり、顔をしかめて胸を手で押さえる。

969 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:36:40.57 ID:5TEczSfJ0.net
 レオンは黒いコートのポケットに両手を突っ込んで不気味に笑っていた。

「異能者はアルガスタの民に忌み嫌われる。だが、俺はお前らより優れていることを忘れてないか?」

 レオンが口をへの字に曲げて首を傾げて肩を竦める。

 レオンが人差指を突き出して小さく左右に振りながら、小太り中年男に歩み寄る。

 小太り中年男の傍に寄ると、レオンは小太り中年男が握っているオートマチック銃を奪い取る。

 レオンがオートマチック銃をまじまじと見て、首を傾げて口をへの字に曲げて何度も頷く。

970 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:36:51.21 ID:5TEczSfJ0.net
「最近のデカはまともな銃を持ってるんだな。だが、俺にはこんなのガラクタに過ぎん」

 レオンが小太り中年男の胸に銃口を向けて、オートマチック銃を撃つ。

 一発の銃声の後、魔法が解けたように、フロントガラス越しに小太り中年男が道路に倒れる。

 レオンは小太り中年男の背中にオートマチック銃を放り投げ、黒いコートのポケットからシルバーの十字架のネックレスを取り出してキスし、小太り中年男の背中に放り投げる。

 レオンは黒いコートの襟を整えてコートを着直し、僕を見て不気味に笑う。

 小太り中年男の顔が僕に向いてて、眼が見開いている。

 僕の胸苦しさが直り、僕は瞼を閉じて首を横に振る。なんて惨いんだ。

 僕はレオンが許せず、瞼を開けて歯を食いしばってレオンを睨む。

971 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:37:04.60 ID:5TEczSfJ0.net
 その時、レオンの黒いコートから携帯の着信音が鳴り、レオンは黒いジープの装甲車の運転席ドアに凭れて黒いコートのポケットから携帯を取り出し、片手を黒いコートのポケットに突っ込み、誰かと電話で話し始めた。



 ルビナ姫が激しく咳き込んで僕は我に返ってレオンから目を逸らし、慌ててルビナ姫を見る。

「ちょ、ちょっと!? 燃えてるじゃない! ガソリン臭いし、早く出ないと爆発するわよ!?」

 ルビナ姫が慌ててシートベルトを外し、屋根に頭をぶつけて身体を起こして口許を手で押さえながら足で必死に罅割れた窓を蹴り始める。

972 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:37:21.28 ID:5TEczSfJ0.net
 僕はルビナ姫に呆れて瞼を閉じて首を横に振る。

 そういえば、隊員が倒れてから僕の胸苦しさが直って、正常に時が流れてる。

 どうなってるんだ。まあいいか。そんなことより、早く脱出しないと。

「あのさ。足で蹴って割れるような窓じゃないだろ。ちょっと待ってて」

 僕は後部座席に振り返って口許を手で押さえ、天井の金属ベルトに目を落とすがロックは解除されていなかった。

 銃で窓ガラスを割って外に出るのは無理そうだな。

 危機的状況に生唾を飲み込み喉を鳴らした。

「ジン! 銃はどう!?」

973 :名無シネマさん:2022/10/26(水) 02:37:30.30 ID:5TEczSfJ0.net
 背後でルビナ姫の怒鳴り声が聞こえる。まだ足で窓を蹴っている音が聞こえる。

 僕は瞼を閉じて首を横に振って、ルビナ姫に呆れて嘆息を零す。

「ダメだ。ロックされてる……」

 拳で金属ベルトを叩いてみるが、ちっとも反応しない。

 僕は諦めてルビナ姫に振り返り、運転席に手を突いてルビナ姫に手を伸ばす。

「そこは危険だ。トランクに移動しよう」

 ルビナ姫は口許を手で押さえながら、片手で肩を竦める。

 ルビナ姫は僕と手を繋いで何故か顔が火照り、慌てて僕から手を離すが、僕の人差指を掴んだ。

 僕は不思議に思って眉根を寄せて首を傾げる。

「どうしたの?」

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