【原発】買い手から売り手に　英原発参画で増す中国の存在感[11/2]

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　英国内の原発事業に中国企業が参画することになった。キャメロン首相と習近平国家主席の両首脳が合意した。
３カ所で計画される原発建設に「中国広核集団」が資本参加。このうち１カ所では中国が「国産ブランド」と称する
１００万キロワット級原子炉「華龍一号」が採用される。英市場に中国ブランドの原発が採用されることは、
中国にとっては絶大な宣伝効果になり、原発を含むインフラ輸出を目指す日本にとっては強力なライバルの出現となる。

　◆絶大な宣伝効果

　英政府は２００８年、新たな原発政策を打ち出し新規の原発建設を推進する姿勢にかじを切った。１１年３月に起きた
東京電力福島第１原発事故後も政策変更はせず、新規建設に必要な制度を整えていった。ただ、英国内では
新規建設が途絶えていたこともあり、自国の技術力は喪失。建設・運転を担うパートナーを探さなければならなかった。

　名乗りを上げたのがフランス電力（ＥＤＦ）だった。南西部のヒンクリーポイント原発、東部のサイズウェル原発に子会社の
ＥＤＦエナジーが出資して主導権を握り、仏原子力大手・アレバが開発した欧州加圧水型軽水炉「ＥＰＲ」を両地点に
２基ずつ建設する計画を立てていた。ところがアレバが経営危機に直面。仏政府はＥＤＦが救済に入るよう要請するなど、
仏勢の足元に揺らぎが生じた。

　一方中国は、自国ブランドの「華龍一号」の対外輸出に向けた地力を培っていた。原発建設の技術力を失ってしまった
英国とは正反対に、中国国内では建設ラッシュ。現在２７基が運転中で、建設中は２４基に上る。未着工ながら建設予定の
原発も２０基を超すとみられている。もともと、米仏露など先進国の技術を輸入していた中国だが、こうした技術をベースに
国産化を進め、「華龍一号」や、より大型の出力を持つ「ＣＡＰ１４００」といった国産ブランドを育てていった。

　原発を含めたインフラの対外輸出を目指すため、中国政府は陸海のシルクロード周辺諸国を、中国とともに発展させようとする
「一帯一路」という対外経済戦略を掲げる。周辺諸国に中国マネーと技術を売り込み、影響力を確保する狙いだ。

　技術を他国に託した英国、お金に不安が生じた仏、そんな両国の間に割って入った中国－。「英国にとっては電力の
安定供給が確保されればいい。実利を取った判断だろう。仏にとってはＥＰＲの輸出先として中国市場には魅力がある。
英仏中とも、それなりにハッピーな選択をしたのではないか」。海外の原子力事情に詳しい関係者はこう分析する。

　◆買い手から売り手に

　一方、日本にとって今回の英中合意はどう関係してくるか。

　まず考えられるのは、今後本格化が見込まれる途上国などでの原発受注合戦への影響だ。

　日本の３メーカー（東芝、日立製作所、三菱重工業）はそれぞれ主力商品を持つ。東芝は傘下のウエスチングハウス
（ＷＨ）が開発したＡＰ１０００、日立は日本でも運転実績があるＡＢＷＲ、三菱重工はアレバと開発したアトメアで
受注競争に挑む。海外市場では現在、「ＶＶＥＲ１２００」という原発を主力とするロシア、「ＡＰＲ１４００」という原発で
打って出ている韓国、ＥＰＲを主力とする仏が、日本の主な競合相手。こうした勢力図に中国の「華龍一号」が
参戦してくる可能性が高まってきたのだ。

　海外の原子力事情に詳しい関係者は「英国で採用された宣伝効果は計り知れないほど大きい。今まで原発技術を
買う側だった中国が、売り手として正式に名乗りを上げたと言っても過言ではない」と指摘。その上で「新たに原発を
導入したい国にとって、華龍一号の存在は重要な選択肢になるかもしれない」と予測する。

　もう一つ、考えたくないシナリオがある。日本国内で原発の再稼働が進まず、国内の技術力が衰退してしまうケースだ。
エネルギー安全保障をめぐる国際環境が現在以上に悪化し、新たな原発が必要になったとき、国内からその技術力が
消滅していたら、中国を含む海外勢に頼るのか？　日本の現状を見ると、現実離れしたシナリオでもないことに
留意しなければならない。

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【プロフィル】塚原晶大

　つかはら・あきひろ　日大法卒。１９９９年電気新聞入社。

サンケイビズ　2015.11.2 05:00
http://www.sankeibiz.jp/compliance/news/151102/cpd1511020500001-n1.htm

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