【山陰中央新報】「竹島」伝える命の限り　佐々木さん（８２）が語り部を１年ぶりに再開[11/2]

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　明治時代に竹島（島根県隠岐の島町、韓国名・独島（トクト））で漁猟をした祖父の体験を、語り部として伝えてきた
島根県隠岐の島町原田の佐々木恂（じゅん）さん（８２）が、１年ぶりに活動を再開する。２度に及ぶ目の手術などで
ふさぎがちになっていたが、町民の声を受けて思いを固めた。「後世に伝えたい証言はたくさんある。命ある限り、声を出していきたい」と
残りの人生を伝承にかける。

　「田畑を売ってお金をつくり、島へ出掛けた」「ニホンアシカやアワビが飛ぶように売れた」「酒造りを行っていた」。佐々木さんは、
竹島漁猟の開拓者とされる祖父の石橋松太郎氏（１８６３～１９４１年）から、思い出話を繰り返し聞かされた。

　語り部活動を始めたのは２０１３年。１月、町が石橋氏の調査に乗り出したと聞き「私が孫です」と調査に協力した。
同時に「祖父が愛した竹島が韓国に（実力）支配されている現状がいたたまれない」との思いがこみ上げ、記憶を作文にまとめた。

　以来、町内公民館をはじめ、脳腫瘍の治療で通院した島根大医学部付属病院（出雲市塩冶町）で「松太郎を語る会」と題し、
祖父の言葉を伝えた。証言を残すのが責務と定め「寝ても覚めても竹島のことを考えていた」という。

　しかし、昨年６月に親しかった出雲市内に住む義理の息子が６９歳で急逝。同１０月には白内障が悪化して入院し、２度の手術を
余儀なくされた。気持ちが落ち込み「人さまの前で話す状態ではなかった。外にも出たくなかった」。講演依頼を断る日が続いたという。

　転機は今年９月だった。風邪をこじらせて町内の病院で診察を受けた際、待合室で初対面の男性に「語り部をなさっている方ですよね。
ぜひ話を聞かせてください」と声を掛けられた。

　予想外の場所で自分を必要とする人がいた事実に、感涙するほど喜びがこみ上げた。体調面では目が回復し、１０年以上闘い続けた
脳腫瘍もほぼ完治。「生きている間にやるべきことはある」と再開を決めた。

　手始めに５日に町内のデイサービスセンターで「語る会」を開き、将来は町が建設する「久見竹島資料収集館」（仮称）を活動拠点にする
構想を思い描く。「皆さんの支援があって再開できた。私には『語り部しかない』という覚悟で頑張りたい」と意欲を見せている。

山陰中央新報　'15/11/02
http://www.sanin-chuo.co.jp/news/modules/news/article.php?storyid=555713004

【山陰中央新報】「竹島」伝える命の限り 佐々木さん（８２）が語り部を１年ぶりに再開[11/2]

【山陰中央新報】「竹島」伝える命の限り　佐々木さん（８２）が語り部を１年ぶりに再開[11/2]