【毎日新聞】中国や韓国を一方的に非難する「嫌中嫌韓」本とどう向き合い、どう考えたらよいのか[8/22]

ねこ名無し ★＠＼(^o^)／

　中国や韓国を一方的に非難する、いわゆる「嫌中嫌韓」本とどう向き合い、どう考えたらよいのか。出版に携わる人々が東京都内でシンポジウムを開いて話し合った。
「人を傷つける本を書店に置いていいのか」「対抗する本をきちんと出していくのが出版人の務めではないか」。さまざまな意見が出た。【青島顕】

多様な本選びフェア

　「嫌中」や「嫌韓」というタイトルのついた本や雑誌は、沖縄・尖閣諸島の国有化（２０１２年）で日中関係が悪化し、在日コリアンへの差別や憎悪をあおるヘイトスピーチが活発化するのと歩調を合わせるように続々と出版され、全国の書店で目につくようになった。
隣国を快く思わない人びとから支持され、増刷を重ねる本もあった。

　やがて、こうした出版物に出版人が異議を唱える動きが出てくる。
１４年５月に河出書房新社の若手社員４人が、リベラルな立場の識者らに頼んで多様なジャンルの１８冊を選んだ「今、この国を考える??『嫌』でもなく『呆』でもなく」を呼びかけると、全国で２００を超える書店がフェアを開いた。
呼びかけた社員の一人は「対抗しようというわけではなく、さまざまな価値観を示したかった」と話す。

　さらに同年１０月、東京の出版社の若手社員らでつくる「ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会」が編集する「ＮＯヘイト！出版の製造者責任を考える」（「ころから」刊）が刊行された。

「自由な社会を破壊」

　ヘイトスピーチ対策法が今年５月に成立したこともあって、極端に排外的な内容の出版物は以前ほど目立たなくなってきた。とはいえ、今も書店から消えたわけではない。

　７月末、出版社員やライターらでつくる出版労連が主催するシンポジウム「『ヘイト本』と表現の自由」が東京都内で開かれた。

　都内の出版社の編集者で「ＮＯヘイト！」編集の中心的役割を担った岩下結さんは、シンポジウムで嫌中嫌韓本はヘイトスピーチにあたるとして「差別を扇動する言動は社会的な少数者を沈黙させてしまい、自由な社会を破壊する」と力説した。
「こうした本で書店が埋め尽くされれば、攻撃されている人たちの足が遠のいてしまう。出版が公共メディアとして成り立たなくなる恐れがあり、差別される側の視点に立った対応が必要だ」と訴えた。

　ジュンク堂書店難波店（大阪市）の店長、福嶋聡（あきら）さんは「ＮＯヘイト！」が刊行された時、店内で「店長本気の一押し！」というミニフェアを開いて応援した。
その一方で、嫌中嫌韓の代表的な本も並べた。「どうして筆者がそういう考えに至ったか知りたいと思った」と理由を説明。「書店員は中立の立場であるべきだとは思わない。薦めたい本は薦めるが、自分の意見と違う本を外すこともしない」と持論を展開した。

　福嶋さんは１９９５年にオウム真理教が地下鉄サリン事件などを起こした時、「オウム出版」の本を店に置き続けた。「事件を検証し、意見を述べるために提供する義務があるし、排除すれば彼らを追い詰めることになる」と説明した。

良質な作品出し対抗

　小学館労組の委員長で教育雑誌編集者の川辺一雅さんは、嫌中嫌韓本について「最近登場したわけではない。販売実績などを分析すれば大きく売れるジャンルではない」と分析。
発行される背景には新書を中心に毎月の発行点数ノルマが厳しく、内容を気にする余裕がないことなどを説明した。そのうえで「よくないと思う本が出たら、対抗するような良質の本を作って出すのが自分たちの仕事ではないか」と問題提起した。

　シンポジウムには、嫌韓本を発行する出版社で営業をしていた男性も参加した。
「年齢の高い層に売れていた。書店を営業で回ると『お客さんが嫌がる』と苦情を言われたことがあり、ヘイト本の営業は気持ちのよいものではなかった。自分が差別をあおるような本を売っているということを、極力考えないようにしていた」と心境を告白した。

http://mainichi.jp/articles/20160822/ddm/004/040/047000c

（>>2以降に続く）