【朝鮮日報コラム】韓国左派が吹聴する「裏切り者・潘基文」論[12/31]

ロンメル銭湯兵 ★＠＼(^o^)／

　最近、韓国の「政治市場」で最も「売れる」人物は、今なお米国のニューヨークにいる。国連の潘基文（パン・ギムン）事務総長は、あと半月ほど後にようやく韓国に戻ってくる。まだ正式に次期大統領選への出馬宣言をしていないにもかかわらず、潘氏に対する「検証」が早くも始まっている。

　ある週刊誌が、潘氏が実業家の朴淵次（パク・ヨンチャ）元泰光実業会長から計23万ドル（約2700万円）の裏金を受け取ったとの疑惑を報じた。野党側は一斉に捜査を訴えている。それだけではない。ソーシャル・ネットワーキング・サービス（SNS）で広がる情報では、彼の弟、息子、おいが実名で取り上げられている。朴槿恵（パク・クネ）大統領の友人、崔順実（チェ・スンシル）被告をめぐる信じ難い事態を目の当たりにしただけに、これを完全に無視することができない。もちろん、「反潘」陣営の一部が根拠のないうわさを量産しているとみることもできる。

　保守・右派陣営は、彼を「メシア（救世主）」扱いしている。大統領の弾劾訴追で苦境に陥った国を救う、唯一の人物だということだ。革新・左派陣営の立場は180度異なる。職業外交官としてコネを作ってきた日和見主義者だとこき下ろしている。特に、最大野党「共に民主党」の文在寅（ムン・ジェイン）前代表の大統領就任を見込む側が積極的に広げようとしているのが、「裏切り者」のイメージだ。革新系の盧武鉉（ノ・ムヒョン）元大統領が全力を尽くして国連事務総長に就かせたのに、裏切ったというものだ。盧氏の墓へ参るのが遅かったという話も欠かさない。

　こうしたたぐいの「裏切り者」論は公私を混同しており、多分に政略的だ。盧氏が潘氏の国連進出を後押ししたのは確かだ。政府レベルでの支援を惜しまなかった。そして、盧氏が潘氏の助けを受けていたのも事実だ。盧氏は2002年の大統領選の土壇場で、人々の反米情緒を刺激して勝利した。ブッシュ米政権の怒りを買ったが、それでも任期中に韓米のあつれきが同盟を破壊するまでには至らなかった。当時のパウエル米国務長官が信頼の象徴と認めていた「潘基文ブランド」が大きく作用したためだ。

　潘氏はニューヨークに常駐していた。そのため、墓参りが遅かったという批判は言い掛かりに等しい。彼が盧武鉉政権で秘書室長を務めた文在寅氏のライバルとなるや、裏切り者呼ばわりするのは封建時代をほうふつとさせる面もある。

　潘氏が心配すべきことは別にある。保守・右派の側から裏切り者と言われることだ。今のところ、次期大統領選に向けた支持率調査で5％を超える保守系候補は彼以外にいない。取り沙汰される人の支持率を全て足しても、最大で7％ほどにとどまる。もし、潘氏不在であすにも大統領選が行われるなら、保守が勝利する確率は0％に近い。これは裏を返せば、潘氏に対する期待がそれだけ大きいということだ。

　多くの国民は、彼の誠実さとコミュニケーション能力を信じて4年近く大統領選候補として支持してきた。もし、こうした期待に応えられなかったり、自らの役割を果たせなかったりすれば、保守層の非難を免れないだろう。

　潘氏が「韓国の発展に役立つならば、この身を燃やして努力する用意がある」と述べた瞬間、賽（さい）は投げられた。潘氏は帰国後すぐ、検証台に自ら立つことが望ましい。はっきりとしたビジョンと国家観を提示し、国民の審判を受けるべきだ。出所が怪しい疑惑報道も多い。だが、検証を避けて通ろうとしてはならない。

　崔順実被告の事件で、国民の視線が変わった。国連事務総長の経歴にばかり頼っていては、大衆を満足させることはできない。来月、ソウル行きの飛行機に乗るときは並々ならぬ覚悟を持ってほしい。全てを賭して臨まねばならないかもしれない。

李河遠（イ・ハウォン）論説委員

朝鮮日報／朝鮮日報日本語版　2016/12/31 07:02
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2016/12/30/2016123000902.html