【岩手日報／社説】北朝鮮の核・ミサイルへの対応、日米韓の外交の安定が欠かせない。駐韓大使を帰任する時期[03/15]

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朴大統領失職　亀裂埋める知恵を探れ

韓国憲法裁判所に罷免され１２日夜に大統領府を去った朴槿恵（パククネ）前大統領の口からは、罷免決定受け入れの言葉も社会統合への思いも出なかった。国民の間にできた溝が、今後の大統領選でさらに広がることを危惧する。

朴氏は国民向けメッセージで「真実は必ず明らかにされると信じている」と、憲法裁決定への不服を示唆した。対立の火種を残さず、亀裂を埋める知恵を探るべきだ。

韓国初の女性大統領となった朴氏の末路は悲惨なものとなった。親しい女性による国政介入と大統領権限の乱用を憲法裁が認定。１９４８年の建国後初となる大統領の罷免が決まった。

韓国の歴代大統領は５年間の政権末期を迎えると例外なく求心力が低下し、家族や親族、側近らの権力との癒着が明るみに出てきた。

朴氏は清廉なイメージで登場しただけにスキャンダルとは無縁という見方もあった。しかし、絶大な権力を使って国家システムを私物化していたことが分かり、国民の怒りが爆発した。

「導火線」となったのは不況や格差拡大への不満。昨年１１月から週末ごとにソウルで開かれた退陣を求める市民集会の規模は回を重ねるごとに膨らみ、８７年の韓国民主化以降最大となった。

朴氏は任期満了前の辞任を表明。謝罪会見も開いたが国民の怒りは収まらない。それは国会の弾劾訴追案可決に結びつき、憲法裁決定まで一気に押し流した形だ。

朴氏は「漢江（ハンガン）の奇跡」と呼ばれた高度成長を実現しながらも暗殺された朴正煕（パクチョンヒ）元大統領の娘。この軍事政権下で展開された闘争を経て民主化が実現した。

それから３０年の節目に当たる今年、旧態依然の娘の政治に対して国民がノーを突きつけるとは、なんという巡り合わせだろう。

５月初めにも予定される大統領選では、候補者は国民の亀裂を埋めるという重い課題を背負うことになる。

国内の格差問題も優先課題だ。新たな指導者には、国民の分断を招いた要因を粘り強く取り除いていく覚悟が必要だろう。

今のところ、９年ぶりに野党が政権を奪回する可能性が大きい。野党候補は従軍慰安婦問題をめぐる２０１５年末の日韓合意見直しに言及しているが、国家間の合意を無にすることは避けるべきだ。

差し迫った課題として北朝鮮の核・ミサイル開発への対応がある。この前提として日米韓関係を中心とした外交の安定が欠かせないからだ。

日本としても次期政権の誕生を前に、一時帰国させた駐韓大使の帰任を検討する時期ではないか。

ソース：岩手日報　2017.3.14
http://www.iwate-np.co.jp/ronsetu/y2017/m03/r0314.htm