【軍事】対北抑止を揺るがす韓国の統制権返還問題　米軍の「扇の要」が失われる　韓国の民族主義が対北抑止を犠牲に[8/01]

ねこ名無し ★＠＼(^o^)／

　７月２８日、北朝鮮が発射した「火星１４」で、愈々（いよいよ）米国本土は脅かされつつある。それは北朝鮮の武力行使にソウルと東京が晒（さら）されたとき、同盟国の防衛のために米国が北朝鮮からの大陸間弾道ミサイル（ＩＣＢＭ）による攻撃を覚悟しなければならないことを意味する。

　そうであるからこそ、韓国の文在寅政権は、北朝鮮が対南武力行使の誘惑に駆られぬよう、在韓米軍の駐留をより確実にしなければならないはずだ。

≪民族主義は対北抑止を犠牲に≫

　同盟は時として、大国が小国の民族主義を抑制して成り立つ。大国は小国の行動を統制下に置くことで抑止を効率的にすると同時に、小国が起こす望まない紛争に巻き込まれまいとする。

　韓国軍に対する作戦統制権が「戦時」に米軍の掌中に収まることについて、韓国の「保守」は北朝鮮への抑止効果の点から評価し、「リベラル」は民族主義を毀損（きそん）するものだと捉える。

　「戦時」作戦統制権ほど、「保守」が「同盟派」で、「リベラル」が「民族派」であることを炙（あぶ）り出す問題はない。かくして、韓国では「保守」「リベラル」間の政権交代のたびに、この問題が浮上する。

　もとより、今日の「民族派」が朝鮮半島で米国の望まない紛争を起こすことは考えられない。「民族派」が「戦時」作戦統制権でもつ関心は、軍事停戦協定に代わる南北平和協定の締結である。

　だが、韓国軍に対する「戦時」作戦統制権が米軍の掌中にある限り、北朝鮮は韓国との対話を正当な対象と見なすことはない。かつての「民族派」の盧武鉉政権はこの認識の下、「戦時」作戦統制権の問題をブッシュ米政権に提起し、返還時期を自身の政権終了後とすることで一旦合意した。

　他方、韓国軍が独自の統制権をもてば、対北抑止の中軸は韓国軍となる。米国がこの問題を在韓米軍の南方移転計画に連動させたのは自然であった。「戦時」作戦統制権の韓国軍への返還は、韓国の民族主義を満たす半面、対北抑止力を犠牲にしなければならない。

　確かに李明博政権の下、統制権の返還時期は当初の２０１２年４月から１５年末に延期された。続く朴槿恵政権ではさらなる延期が決定した。

　米軍が引き続き「戦時」作戦統制権をもつ以上、在韓米軍の主力部隊の幾つかはソウル以北に残留することになった。だが、在韓米軍の移転計画自体が中断されたわけではなかった。

≪囁かれる「未来司令部」構想≫

　文在寅氏が選挙公約に任期内の「戦時」作戦統制権の返還を掲げ、盧武鉉氏と同じ「民族派」の旗幟（きし）を掲げた。さらにトランプ米大統領との首脳会談で統制権返還問題を提起し、共同声明では「早期」に解決するとうたった。

　かつて盧武鉉政権は自らの政権終了後に返還時期を設定したため、後の政権によってその合意は覆された。文在寅氏が「早期」というからには、任期中に返還を実現し、後の政権がその合意を覆す余地を残さないためであろう。

　折しも過日、米８軍司令部がソウル南方の平沢に移転した。これは当初からの在韓米軍移転計画に盛り込まれてはいたが、計画によれば下位部隊の第２歩兵師団も来年に平沢に移転することになる。

　そこで「戦時」作戦統制権が韓国軍に返還されれば、米韓連合軍司令部は解体され、前線に残留した部隊もソウル以北を離れる。

　これを受け、韓国軍の一部で囁（ささや）かれているものに、「未来司令部」構想がある。これは単一の司令部の下、韓国軍が米軍に作戦統制を及ぼすという俄（にわか）には信じがたいものである。

　実は、朴槿恵政権初期にも「連合戦区司令部」構想があった。「未来司令部」構想は、日の目を見なかった「連合戦区司令部」構想の亜種といってよい。

http://www.sankei.com/world/news/170801/wor1708010016-n1.html
http://www.sankei.com/world/news/170801/wor1708010016-n2.html
http://www.sankei.com/world/news/170801/wor1708010016-n3.html
http://www.sankei.com/world/news/170801/wor1708010016-n4.html

（>>2以降に続く）

http://www.sankei.com/images/news/170801/wor1708010016-p1.jpg
防衛大学校教授・倉田秀也氏

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