【台湾】台湾で沸騰「線香で大気汚染」問題…当局VS寺院が中国に“飛び火”のナゼ[8/20]

ねこ名無し ★＠＼(^o^)／

お盆の墓参りで「線香をあげるな」と言われたら、どう感じるだろうか。台湾では、線香を大量に燃やすと大気汚染が悪化するとして、政府が使用の自粛を呼びかけたところ、抗議デモが起きた。仏教や道教などの宗教関係者ら約１万１千人が「信仰の抑圧だ」などと反発し、台北市内を行進したのだ。

「政府が決めるな」

台湾では、仏教や道教の寺院に参拝する際、大量の線香を使ったり、紙幣に見立てた供物「金紙」を燃やしたりする習慣がある。線香といっても長さ４０～５０センチで日本のものより長く、境内にまつられた神仏それぞれに供えるため、おのずと煙は多くなる。

加えて祭りや行事のときには、爆竹を豪快に鳴らす。しかも、線香も爆竹も使う数が多いほど信仰が厚く、運気が上がると信じられているという。

ＡＦＰ通信によると、昨年４月に行われた航海・漁業の守護神「媽祖（まそ）」の巡礼では、ルート付近で微小粒子状物質「ＰＭ２・５」の大気中濃度が世界保健機関（ＷＨＯ）の基準値の６０倍を超えた。爆竹の煙が影響したとみられている。

こうしたこともあって、政府は線香や爆竹、金紙の抑制に乗りだそうとしたのだが、宗教関係者らが「政府が決める話ではない」とかみついたのだ。

デモ行進は７月２３日に行われ、参加者らは神々をまねて化粧をしたり極彩色（ごくさいしき）の衣装をまとったりして、総統府までの道のりを練り歩いた。

これに対し、総統府の報道官は「信教の自由に政府は干渉できないし、干渉もしない」と強調。李応元・環境保護署長（環境相に相当）は台北市内にある有名寺院の龍山寺を参拝し、自ら線香を上げてみせるなど騒動の“火消し”に追われた。

収入にも影響

ただ、大気汚染の改善に向けて線香や爆竹、金紙の使用を減らそうという政府の方針は、変わらないとみられている。

蔡英文総統は４月、自身のフェイスブックで「線香や金紙を燃やすという伝統的な習慣は、時代に追いつくべきだ」と主張した。強制はしないものの、寺院参拝者の意識を少しずつ変えようという狙いがある。

寺院側も、こうした政府の意向を無視できなくなっている。

中央通信社によると、日本人にも人気のある観光スポットで、三国志の英雄、関羽をまつる行天宮（台北市）は、線香を立てる香炉を３年前に撤去。龍山寺も７基あった香炉を段階的に減らし、今年５月には１基に集約した。

一方、デモを主導した北港武徳宮（雲林県）は、大気汚染の原因は車両の排ガスが３０％以上を占めており、宗教行事で生じる煙は０・３％にすぎないと主張している。

と、ここまでなら環境か信仰かという対立で終わる話だが、寺院側には抜き差しならない事情がもう一つある。経営だ。

中央通信社は「多くの寺院は、線香や金紙を売って収入を得ている。使用量が減っても収入を維持できる仕組みが必要だ」などとする専門家の話を紹介。

「より良い価格で販売するために、線香と金紙の品質を改善することは、環境保護を促進しながら寺院文化を生かし続ける解決策の一つになり得る」と指摘している。

“元凶”は中国？

ＡＦＰ通信によると、環境保護団体は線香や金紙を燃やした際、ベンゼンやトルエンなどの有害な化学物質が発生する危険性を強調している。

一方、台湾外交部のニュースサイト、台湾トゥデイ（日本語版）はデモから４日後の７月２７日、「輸入線香にも国内基準に準じた品質管理を」と題した記事を掲載。

台湾で使われる線香や金紙の７割が輸入品であるにもかかわらず、国内製品並みの品質管理が行われていない、という問題点を挙げた。

その主な輸入元が、蔡政権の発足以来、関係の冷え込んでいる中国なのだという。

この記事では、業界団体「台湾香業発展協会」の陳文忠理事長の話として、１９８０年代から中国製の粗悪な線香が台湾に流入し、合成香料や石灰などを使用していることが、健康問題や大気汚染の原因になっていると指摘している。

陳氏はこう語っている。

「信仰心があるなら、良い線香をあげるべきだ」

http://www.sankei.com/west/news/170820/wst1708200001-n1.html