７月１０日。突然、重慶市書記の孫政才が失脚し、貴州省書記の陳敏爾が後釜を引き継いだ。
孫政才は胡錦濤前政権時代に共青団（共産主義青年団＝「団派」ともいう）のライジングスターと言われ、４９歳で農業相、第十八回党大会で政治局員に抜擢された。このため一時は次期首相候補として有力視されたこともあった。
前の重慶市書記で、習近平最大の政敵だった薄煕来時代の汚職体質が一掃されなかった責任云々と取って付けたような理由が並べられ、あるいは孫夫人の汚職にあるともされた。
しかし北京の情報筋に言わせると、習近平は子飼いの陳敏爾を取り立てるために孫が邪魔だったのである。あらたに重慶市書記となった陳敏爾は浙江省時代からの習近平の子飼いで、習近平が浙江省書記のおりは党宣伝部長を務めた。“二階級特進”で貴州省書記になったときも想定外の人事だったので驚かれた。
要するに習近平は、この陳敏爾のような田舎者、方言丸出しの木訥男が好きなのである。庶民性を売り物とするからには、エリート臭の強い大学優秀卒業の団派は体質に合わないというわけだ。
政治における派閥均衡、人脈のバランスから言えば、貴州省という田舎から重慶特別市への「横滑り」人事は中国共産党ランキングで大出世である。すでに陳敏爾は２０５名いる中央委員メンバーであり、次期政治局入りは間違いないとされる。
孫政才は団派同士では、もう一人のライジングスター胡春華とのライバル関係にあった。ところが孫はいつしか共青団人脈から習近平に近づいたため胡錦濤人脈から嫌われてきた。
胡春華は広東省書記だが、このポストは一貫して反主流派の大物が抑える。前任者の汪洋（現副首相、次期首相候補のひとり）は国際的にも顔が広く、日本の要人が訪中すると必ず面会するのも彼なら、米国との戦略対話の中国側の責任者も彼でもある。四月の習近平訪米では、米国大統領トランプとの首脳会談で習の隣席に座った。
さて人事をめぐる本格的な派閥争いが、表面に出始めた。孫政才の失脚による玉突き現象も広がり、次期執行部の顔ぶれはまだ霧の中だが、これまでの動きをざっと振り返ることによって構造的対立の図式が浮かんでくる。
大雑把にいうと中国共産党の権力対立は、習近平派 ＶＳ 江沢民派（上海派）という構図だが、これに加えて習派と団派との対立も顕著になってきた。
当初、強力な派閥をもたない習近平は団派と共闘関係にあったが、朋友の王岐山（政治局常務委員。中央紀律検査委員会＝以下、紀律委＝書記）は反腐敗キャンペーンで「大虎も子蠅も」汚職幹部は容赦しないとし、
軍人で江沢民派だった徐才厚と郭伯雄を血祭りに上げ、薄煕来に次いで、検察司法を抑えていた周永康を追い落とした後、その勢いあまって団派の大番頭だった令計画を拘束し裁判にかけた（無期懲役）。
この令計画失脚を契機に習近平は胡錦濤・李克強率いる団派とも激烈な対立関係となる。李克強首相は経済政策の決定権も習近平に奪われ、ずっと横を向いたままだ。
現在の中国共産党の政治局常務委員、つまりトップセブンのうち、習を除いて李克強は団派、王岐山と兪正声は太子党、そして残りの劉雲山、張徳江、張高麗が江沢民派。習の朋友はトップレベルでは王岐山しかいないのである。
常務委員をのぞく政治局の残り１８名をみても李源潮、劉延東、胡春華ら団派が１０名。習派は僅かに栗戦書と王滬寧くらいである。
前者は文革時代に陝西省に下放されていた習近平の友人であり、後者は江沢民、胡錦濤、そして習近平と三代につかえる外交ブレーン、すなわち「中国のキッシンジャー」である。このふたりが次期政治局常務委員入りするのは確実とみられる。
習近平が権力を集中させる手段のひとつが軍事改編（七大軍区を五大戦区として３０万陸軍を削減し、さらに総四部体制を十五の部局にわけて分割統治）で、もうひとつが反腐敗運動による政敵の追い落としだ。
http://www.sankei.com/premium/news/170909/prm1709090004-n1.html
（>>2以降に続く）
庶民は王岐山の反腐敗キャンペーンに拍手喝采だが、共産党内は戦々恐々。王岐山への恨みは凄まじく暗殺未遂は２７回に達したとされる。しかし第十九回党大会を前に、習近平は王岐山のパワーがこれ以上伸びることも恐れだした。歴代皇帝が寵臣を粛清して権力を絶対のものとしたように、「使い捨て」の対象にし始めたのだ。
身の危険を感じた王岐山は７月３日に北京で「扶貧領域監督執規問責工作電視会議」を主催し、存在感を示した。テレビ会議で未曽有の１２万人が参加したこの「扶貧領域監督執規問責工作電視会議」は、日本的に言えば「貧困扶助事業の監督と問責工作のためのテレビ会議」である。
中国共産党がどこまで本気で貧困排除をやっているか、きちんと監督し、工作を奨励する目的がある。
主催は紀律委、つまり王岐山だ。会議には５名の紀律委副主席が出席した。すなわち趙洪祝、楊暁超、呉玉良、李書磊、劉金国。くわえて中央弁公庁紀検組長の除令義も席に就いたので、彼が次の秘書長に就任するのではないかと観測されている。
参会者全員が白のワイシャツを着ているなか、ひとり王岐山だけは紺色のシャツに薄茶のジャンバーを羽織っていた。存在感の誇示である。
この勢いを見た習近平はやはり王岐山を残留させ、次期首相というのが直近の有力情報だ。
とはいえこうした対立構図は表層の動きであり、裏舞台で進行しているのは利権の争奪戦である。
各派閥の領袖には金庫番がおり、その金庫番と密接に繋がるのが中国独特の「政商」たちである。
江沢民派の金庫番だった郭文貴は、中国から忽然といなくなり、習近平が国際手配しているトップクラスの人物である。彼は最近、欧米メディアに頻繁に登場し、「共産党幹部の秘密を握っているが、ばらしても良いぞ」と爆弾発言を続けている。最近はダライラマ法王とも面会した。
郭文貴は江沢民、曽慶紅ら上海派人脈に深く食い込み、彼らの資産形成、外国への資産隠匿の走狗として世界を走り回っていた。中国に拉致拘束されているインサイダー取引の闇の帝王こと肖建華の兄貴分とも言える。
肖建華もまた江沢民一族の資産形成を香港市場を通じて実践してきた証券マンあがり。香港の豪華ホテル、フォーシーズンズに長期滞在していたが、ボディガード８名が付き添っていたのに白昼堂々と拉致され、いま北京で取り調べを受けている。
つまり秘密の暴露を事前に封じ込められたのだろうが、薄煕来の金庫番だった徐明が獄中で謎の死を遂げたように、暗殺という口封じの可能性もある。
郭文貴が暴いているのは王岐山の海外の豪邸とか、習近平の姉たちの不正蓄財であり、どう考えても習近平に対する江沢民派の巻き返しである。
５月２５日にサウスチャイナ・モーニングポストは、郭文貴が自家用飛行機でアブダビへ飛んで英国のブレア元首相の仲介でモハメド・ビン・ザイード・アル・ナーヤン皇太子ら王室のメンバーと会見し、共同のファンドを設立したニュースを報じた。
郭文貴は肖建華とともに中国の株式インサイダー取引に絡み、秘密口座などを駆使して、太子党や共産党幹部のカネを運用していたとされる。それゆえ秘密を握るわけだ。馬健（当時公安部副部長）の失脚直前に海外へ逃亡したが、令計画の実弟、令完成の米国亡命と時期が重なったため、世界のマスコミも騒いだ。
郭文貴は上海に設立した「海通国際証券」（Ｈａｉｔｏｎ Ｓｅｃｕｒｉｔｙ）を通じて世界のプロジェクトに派手な投資を繰り返し、とくに２０１４年には３８５億ドルを七つのプロジェクトに投下した。
資金繰りが苦しくなると、２０１５年にはＵＢＳ（旧ユニオン・バンク・オブ・スイスランド）から７億７５００万ドルを借りて焦げ付かせた。スイス銀行の大手ＵＢＳも、彼の手口に引っかかっている。
彼はブレア首相との昵懇な関係から、世界の投資家との間にコネクションを築き上げた。とくにブレア夫人の著作（２００９年出版。『私自身を語る』）の原書を５００冊、中国語訳本を５０００冊も買い上げているが、その政治ロビィスト的な、金銭の配り方も中国人の伝統的なやり方だった。
中国語メディアやユーチューブなど西側のメディアを駆使して、中国共産党の腐敗を暴くのだから、中国にとっては「除去」すべき対象なのだが、中国の庶民にとっては人気者である。ＶＯＡ（ヴォイス・オブ・アメリカ）の番組（４月１９日）では三時間にわたって、共産党幹部等の腐敗を暴き続け、北京の神経を逆なでした。
（続く）
同番組は生中継だったため放送は一時間で中断されたが、その内容は中国共産党幹部等を震え上がらせるもので、翌日から中国は公式メディアばかりかインターネットなどを通じて「法螺吹き、嘘つき」と郭文貴を強く非難する宣伝合戦に乗り出した。
ただ郭文貴の暴露した高官等の腐敗などすでに多くのチャイナウォッチャーにとっては既知の事実でしかなく、「博訊新聞網」などは「郭の最終的なターゲットは習近平である」とした（２０１７年５月２３日）。
●（＝登におおざと）小平の孫娘と結婚し「紅二代」といわれる、安邦保険集団のボス、呉小暉も中国当局に拘束された。英国フィナンシャル・タイムズは、「呉小暉には出国禁止の措置が取られている」と報じており、海外への逃亡には間に合わなかったようだ。
呉小暉は浙江省温州生まれ、５１歳。温州はいうまでもなく「中国のユダヤ人」と言われるほど、投機大好きの土地柄。がめつい商人も輩出する地域として有名だ。
呉の初婚の相手は当時の温州市長だった劉錫栄の娘だったが、再婚した相手は、●（＝登におおざと）小平の孫娘、●（＝登におおざと）卓苒である。陳毅（元元帥、革命の元勲）の息子、陳小廬とも親しい。「紅二代」に成り上がったこのエスタブリシュメントは絶対に捜査の手が伸びないといわれてきた。
にもかかわらず王岐山主導の「反腐敗キャンペーン」チームは「聖域」に挑戦し、彼を拘束したのだから、中国メディアは大騒ぎになった。安邦保険といえば、海外への投資に異様な熱意で取り組み、カナダ、米国、韓国などで派手な企業買収を繰りかえして蛮名を馳せた。
その絶頂期は２０１５年のＮＹウォルドルフ・アストリア・ホテル買収である。天下の名門で、先帝陛下もお泊りになった老舗ホテルは、地下には大統領専用の列車プラットフォームもあった。買収額は１９億５０００万ドル（２１４５億円）だった。
安邦保険の資産は２４２０億ドル（２７兆円弱）にも達するとされ、オランダのヴィバント、韓国のトンヤン生命、全米のホテルチェーン、そして中国では民生銀行、中国農業銀行の大株主であり、その買収による肥大化を「中国のブラックストーン」と譬える向きもあった。ブラックストーンとは有力な米国の禿げたかファンドである。
この安邦保険集団トップ拘束で、６月１４日、香港Ａ株に上場している安邦生命保険の株価が暴落し、４５億２４００万元（邦貨換算７２８億円強）が一日で蒸発した。
総資産は１９００億元、中国全土に３万人の従業員、保険契約者は３５００万人という大企業だから、投資家もパニック状態となった。保険契約者はプレミアムの支払いが行われるかどうか疑心暗鬼に陥った。銀行なら取り付け騒ぎに発展しかねない事態である。
安邦保険集団の在米資産は６０億米ドル（６６９９億円）といわれるが、すでに米国で買収したウォルドルフ・アストリア・ホテル、スターウッド・ホテルチェーンなど在米資産の売却も噂されはじめている。
ニュージャージー州のトランプタワー分譲も、トランプ大統領の女婿クシュナーの親族が「永住ビザに有利」と売り出していたため、安邦保険集団が主導し、中国人投資家がごっそりと購入し、米国でも問題視されてきた。安邦保険集団のボス呉小輝は２０１６年１１月にクシュナーと面会もしている。
これは単に保険会社のボスの拘束ではなく、北京・中南海の陰湿な権力闘争の荒波のなかから派生した事件であり、これから株価崩落がさらに下落方向へ突き進めば、中国のバブル崩壊の序曲が奏でられたことになる。
一方で、習近平体制において権勢を誇ってきた中国最大財閥「大連万葉集団」も危機に瀕した。
四年前に大連へ取材に行った折、ロシア街の取材途中、公園のそばに摩天楼があって、運転手に「あのビルは？」と聞くと「あれが万達集団の本社ビルさ」と答えたので写真におさめたことがある。
中国銀行監査管理委員会は、この万達集団から申請が出ていた六件の海外企業買収案件につき、「いかなる送金も認めない」と決定した。
この決定は６月２０日に口頭でなされていたが、メディアが把握したのは一か月も後の７月１７日になってからだった。
同委員会はすべての銀行にも口頭で通達し、万達集団のいかなる海外送金もこれを禁止した。これは、つまりすべての万達の国際業務が止まることを意味する。また、この措置は北海道の別荘地を買収している復星集団などにも適用された。
窮地に追い込まれた万達集団のＣＥＯ、王健林はすぐに対応を余儀なくされた。
（続く）
債務超過のため保有するホテルと娯楽施設、テーマパークを９３億ドルで、売りに出された。ほかにも契約まで進んでいたハリウッドの映画製作会社の買収は、送金ができず案件は宙に浮いた。
これまで万葉集団は片っ端から娯楽産業を強気、強気で買収してきた。２０１２年に米国の映画館チェーン「ＡＭＣ劇場」（８２００スクリーン）を２６億ドルで買収したのを皮切りに、豪華ヨット会社、マドリードのランドマーク「エデフィシオ・エスパニオール」（４億ドルで買収後、２０１６年に売却）、
スイスのスポーツマーケッティング企業「インフロント・スポーツ」（２０１５年。１２億ドル）と続いた。王健林はオーストラリアとニュージーランドにも目をつけ、最大の映画館チェーン「ホイツシネマ」（３億６０００億ドル）、ハリウッド映画スタジオ「レジェンダリー・エンターティンメント」（３５億ドル）なども買収した。
しかし、ここへきて中国政府の厳格な外貨制限に直面し、経営がふらつきはじめたのだ。
ハリウッド映画買収失敗以外にも宙に浮いたのは「ノルディック・シネマ」と米国の「カーマイク・シネマ」（２９５４スクリーン。提示金額１１億ドル）だった。前者は北欧諸国（スウェーデン、フィンランド、エストニアなどに６６４スクリーン）の大手映画チェーンで、提示金額は９億３０００万ドルだった。
北欧諸国は中国の資金を期待していただけに、最近の急激な経済悪化に戸惑いの色を隠せない。王健林は、２０２０年に世界最大の映画館チェーンを保有するという途方もない夢を豪語し、米国のメディアからも『中国最大企業家』と持ち上げられてきたが、その夢も邯鄲の夢に終わろうとしている。
習近平体制で肥大化した万葉集団と王健林に、何があったのか、今は分からない。ただ、彼はハーバードのビジネススクールに二回も招かれて講演しているが、２０１５年１１月の講演で、得々と習近平一家と親しい関係を自ら喋り、香港にいる姉妹に上場前の株式を保有して貰い、彼女らは大儲けしたという内輪話を口走ってしまった。
同じ頃、米国連邦議会では「ハリウッド映画はアメリカ文化、買収を許すな」という騒ぎが始まり、２０１６年暮れに香港で上場されていた子会社「万達商業」が上場廃止となり、Ｓ＆Ｐ（スタンダード・プアーズ）は万達社債のランクをＢＢＢに下げた。王健林はマレーシアの住宅開発プロジェクトからの手を引くとした。
こうして各派領袖の金庫番が次々と落日に陥っており、次はアリババの馬雲も黄昏に近いというのがもっぱらの噂である。
派閥の領袖に繋がる金庫番、それにコバンザメのようにくらいついてきた政商らの黄昏は、あきらかに次の政変の前触れである。そして、同時に次の権力に繋がる新しい政商が登場することになるだろう。
宮崎正弘（みやざき・まさひろ）氏 昭和２１（１９４６）年生まれ。早稲田大学中退。「日本学生新聞」編集長、雑誌「浪曼」企画室長を経て貿易会社経営。『もうひとつの資源戦争』（講談社）で論壇へ。中国ウォッチャーとして知られる。
（おわり）
絶対権力を集中させることに躍起になっている権力者は、いつも失脚後の恐怖に怯えなければならない。
哀れな権力亡者。
本気で汚職を減らしたいなら、送る側も犯罪者にすべきでは
http://www.zsdfaqw.shop/87.html
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だから、習くんは突然北朝鮮を見棄てる手のひら返ししたんだろ。
アメリカの経済制裁を回避、国内経済を維持し、
江沢民派の軍閥は北朝鮮との戦争に突っ込んで、
反抗したら粛清で殺す、
素直に従っても北朝鮮の地雷源に万歳突撃で殺す、
習くん独裁体制は強靭化されるっと。
韓国マスコミの語る「今上天皇VS安倍総理」みたいな深読みし過ぎのバカ判断かどうか分かる方法はないものか？
そしてクリントン
さぁさぁどうなる？
北だけしっぽ切りされるのか？
それとも一網打尽にされるのか？
中国は江沢民派が復権
日本のヤクザは非合法のアウトローだけど
中国共産党は最高権力保持政党
中身は変わらんけど