【朝鮮日報コラム】ノーベル平和賞の光と影[11/02]

ロンメル銭湯兵 ★＠＼(^o^)／

　アルフレッド・ノーベルは55歳だった1888年に自分の訃報記事を読むという奇妙な体験をした。亡くなったのはノーベルの兄だったが、
フランスのある新聞社がこれをノーベルと誤って訃報記事を掲載したのだ。その記事の見出しは「死の商人、死ぬ」だった。
大量殺傷兵器として使用されるダイナマイトを発明し、膨大な富を手に入れたノーベルを「死の商人」と表現したのだ。
ショックを受けたノーベルは、あらかじめ作成しておいた遺言を修正した。「残った私の財産で、人類の利益に寄与した人々に
毎年賞を与えたい」。ノーベルの血塗られた財産3100万クローナ（スウェーデンの通貨、現在のレートで約200億円相当）が
世界最高権威のノーベル賞に変わった瞬間だった。

　ノーベル賞は、1901年に始まって1年に1回、化学、物理学、文学などの分野で大きな業績を残した人物に授与される。
今年も10月初めから生理医学賞を皮切りに次々と受賞者が発表された。自分が選ばれたというニュースに喜びを隠すことが
できず思わず笑みがこぼれてしまう受賞者の姿は、見ている者をほほ笑ませた。しかし、昨今のノーベル賞の中で最高の
栄誉といわれるノーベル平和賞の受賞者が発表されたときは、拍手しながらも笑うことができなかった。共同受賞した
パキスタンのマララ・ユサフザイさんとインドの人権活動家、カイラシュ・サティーアーティさんがノーベル賞を受賞するに
値しなかったからというわけではなかった。

　ノーベル平和賞は他の部門と違い、受賞者の業績が輝くほど、その背後には暗い反平和的な現実が存在していることを
物語っている賞だ。ようやく17歳になったマララさんが歴代最年少でノーベル賞を受賞したのも、それほど幼い少女にさえ
容赦なく「学校に通う女は死ななければならない」と頭に銃を突き付けるタリバンのような極端主義性向の武装組職が
今も存在しているためだ。タリバンと「女は学んではならない」というパキスタンのおかしな社会風潮がなかったら、マララさんが
15歳だった2012年、登校中にタリバンの放った銃弾で左側頭部を撃たれ、死の境地をさ迷うような事件は起こらなかったはずだ。
子どもを誘拐して売り飛ばし、強制労働させ、金をもうける大人たちがいなかったら、サティーアーティさんが命懸けで子どもの
権利活動に身を投じる必要もなかったはずだ。

　昨年の今ごろ、国際機構の化学兵器禁止機関（OPCW）が手にしたノーベル平和賞の金メダルの背後には、その年8月に
シリアの内戦で使用された化学兵器で命を失った1000人の民間人の恨みが込められていた。この惨事をきっかけに、無能な
独裁政権が権力を維持するために利用する化学兵器に対し見直しを叫ぶ声が拡大、OPCWが受賞することになった。
赤十字国際委員会（ICRC）、国連難民高等弁務官事務所（UNHCR）、ユニセフ（国連児童基金）、核戦争防止国際医師
会議（IPPNW）、ミハイル・ゴルバチョフ元ソ連大統領、ネルソン・マンデラ元南アフリカ共和国大統領、国境なき医師団など、
歴代のノーベル平和賞の受賞者を見ると、その偉大さとともにここ100年間で人類がどんな罪を犯してきたのかも一目で理解できる。
受賞後間もなく暗殺された、エジプトのアンワール・サダト大統領、イスラエルのイツハク・ラビン首相、米国のマーチン・ルーサー・
キング牧師のケースは、平和のための努力がどれほど困難なものかを物語っている。ノーベル平和賞の受賞のニュースにわれ知らず
頭が下がる理由がまさにここにある。

ノ・ソクチョ国際部記者

朝鮮日報／朝鮮日報日本語版　2014/11/02 07:14
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2014/11/02/2014110200098.html